Koudai on Koudai2023-2024

2024年シーズンのスーパーGTの開幕がいよいよ近づいてきました。年に1回のスペシャル企画「Koudai on Koudai 2023-2024」にたくさんの質問を送っていただき、本当にありがとうございました。今回もレースに関する質問から、塚越広大が力を入れているラジコンやYouTubeに関することまで、幅広い内容のものが届きました。前編と後編の2回に渡ってお届けします。まずは前編からご覧ください。
取材・文=川原田剛/写真=GTA、ThreeBond Racing

前編

鳥取県のN-ONE857さん、三重県のさとっぽさんを始め、多数の方からの質問です。「スーパーGTでは2024年からマシンがNSX‐GTからシビックタイプR-GTに変わりますが、クルマの違いや走りやすさとか乗りやすさなどを教えて下さい」
クルマのボディが違っているので、NSXとは若干空力特性が異なっていますが、その中でも「レースに強いマシンを開発する」という方向性は変わりません。今は試行錯誤の段階ですが、まずはNSXのレベルを超えることを目指しています。その目標が達成されればまた次の段階に入るのかなと思っています。

2024年のスーパーGTはルールが変わることが大きい。予選はQ1、Q2の「タイム合算方式」となり、予選で使えるタイヤは1セットに制限されます。イベントに盛り込めるタイヤも4セットと前年から1セット減ります。今年のルールでは予選で遅くてもレースで速ければ勝てます。ストレート区間が速いとかコーナー速いとかじゃなく、レースで強くなければ話にならない。そこをどう見いだせるのかが勝負です。

でも正直言ってドライバーとしてはニュータイヤを履いて一発タイムを出すというタイミングがないのは寂しいです。今年のルール変更によって環境に配慮しつつ、ファンが楽しいと思ってくれる形になればうれしいです。
三重県のscp10userさんや愛知県のみちこさんを始め、多くの方からの質問です。「リアルレーシングひと筋の塚越選手、気がつくと塚越選手がスーパーGTのGT500クラスデビューしたぐらいの年齢の後輩ドライバーの太田格之進選手が相棒になりました。塚越選手自身は、デビュー当初の金石年弘さんのようなお立場で、感慨深いのではないでしょうか。今はどんな気持ちですか?」
僕自身、まだまだ若くて未熟なところがあるのですが、年弘さんと組んでいた当時を振り返ると、すごく生意気だったなあと思うことがあります。でも年弘さんからいろいろ学ばせてもらいました。例えばマシンを降りた後の行動や、一緒にトレーニング合宿に行った時に勉強させていただいたことは今でも生きています。当時の僕は、いい意味で年弘さんから盗んで、自分の力にしようというふうにしていました。

2024年、若い太田選手と組みますが、僕自身、まだまだ速くならなければならないですし、太田選手から何か勉強になるところがあるはずですので、それを盗みたいと思います。逆に太田選手に対して何か示せるものがあるのであれば、僕もうれしいことです。とにかく勝つためにひたむきに、全力で走ろうと思っています。
三重県のscp10userさんからもう一問です。「私の息子がレーシングカートをしているのですが、弱気に負けて勝負することから逃げるので、勝つどころか成績にもつながりませんでした。しかし時折見せる光るものがあり、今年もチームはレースに出られるチャンスを用意して下さいました。ただ息子は自分を信じることができないらしく、ライバル全員が自分より格上に見えて弱気になってしまうと話しています。誠に図々しいですが、彼の他にも似たようなお悩みをお持ちの子がいるかもしれません。励ましやアドバイスを頂けますと幸甚です!」
自分の弱いところ、ダメなところをわかっているのであれば、なおさら弱点を克服するために走らなければならないと思います。克服するのは簡単ではないと思いますし、僕がアドバイスをしたとしても、すぐに治ることではないでしょう。ドライバーは結局、自分でどうにかしていくしかないんです。まずは覚悟を決めて、自分の弱さに向き合い、チャレンジしていく。そうしないと変われません。

ライバル全員が自分より格上に見えてしまうのであれば、むしろ思い切ってチャレンジできるのではないかと思います。そしてライバルを乗り越えていけばいいだけです。レースでは絶対に勝てない相手はいないはず。自分のほうが劣っているとわかっているだけでもプラスに考えていけばいいと思います。逆に自分は相手より格上だ、優っていると思っていて負けるより100倍いいと思います。でも繰り返しになりますが、チャレンジしないことには状況は何も変わりません。変わる勇気を持ってほしいですね。
福井県のかおりpuipuiさんからの質問です。「YouTubeでコンビを組んでいるGAMA大明神のBUNGOさん、まこさんとはいつからのお仲間なのですか?」
まことは中学からの同級生で、実家も割と近所です。まこと僕の間にはもう一人、共通の友人がいて、その彼を通じて知っていました。でも、まことは最初あまり仲が良くなかった(笑)。コイツは何なんだと思っていたのですが、気がついたら仲良くなっていました。そのきっかけは全然覚えていません。

中学時代の思い出は、3年生の最後は部活も終わって、受験勉強が始まります。僕は毎日、友だち数人で集まって、まこの家でゲーム『Dance Dance Revolution(ダンスダンスレボリューション)』をしていましたね(笑)。そのうち僕だけがまこの家に行くようになった。で、高校に入ってからまこのバイト先でBUNGOと友達になった。鹿沼インターの近くの『レッドロブスター』です。まことBUNGOがバイト先で知り合って、いつも一緒に遊んでいると聞いて、そこに僕が合流したという流れですね。
福井県のかおりpuipuiさんからもう一問です。「お子様おふたりともレーサーになりたいとおっしゃったらどうなさいますか?」
どうしましょうね? 僕は子どもたちには自分がやってきた世界じゃないところに行ってほしいというのが本音です。自分の両親から「自分の知らない世界に連れてきてくれてありがとう」と言われ、それが僕としてはうれしかった。だから僕も子どもたちには自分の知らない世界を僕たちに教えてほしい。そういう人生を歩んでいってほしいなあと思っています。

僕の希望を言えば、宇宙に行ってほしい。あわよくば自分が行きたいぐらいです(笑)。今年2月に種子島宇宙センターからH3ロケット2号機打ち上げられましたが、見に行こうかなと思っていました。それぐらい宇宙には憧れがあります。ホンダは今、宇宙開発もしているので、何かに関われればいいなあと思っています(笑)。
熊本県のまきくみさんからの質問です。「私の座右の銘は『うんとこどっこいしょ!なんでもできちゃうはずなんだ!今度はきっといちにのさん♩』なのですが(笑)、塚越選手の座右の銘は何ですか?」
座右の銘は前も聞かれたことがありましたが、何と答えたかな……。座右の銘とは違うかもしれませんが、最近意識しているのは「自分の敵は自分」という言葉ですね。僕は漫画『宇宙兄弟』の主人公、南波六太をリスペクトしているのですが、彼が作品の中で話した言葉なのですが、その通りだと思っています。
静岡県のしゃんさんからの質問です。「スーパーフォーミュラとスーパーGTのGT500クラスのマシンとの大きな違いはなんですか?」
ドライビングに関して言えば、速く走るための方法は変わりません。スーパーフォーミュラだから、スーパーGTだからこういう走らせ方をしなければならない、とは考えていません。乗り方は基本的に一緒です。一番の違いはタイヤの特性です。やっぱりスーパーフォーミュラはタイヤがワンメイクですし、1シーズン1スペックで走らなければならないので、温度レンジが適正なところに入れるのは結構難しいところです。対してスーパーGTはその時々で合わせることができますので、意外とタイヤのパフォーマンスが出しやすかったりします。そういう意味ではフォーミュラはすごく難しいなあと感じます。
愛知県のりえさんを始め、たくさんの方からの質問です。「スーパーGTの太田格之進選手の印象は?」
すごく一生懸命に走っていますし、コメントもしっかりしています。いい雰囲気でやっていますよ。もともと彼がF4を戦っていた時にリアルレーシングのメンバーと一緒にやっていたので、太田君もチーム内に知っている人が多いので、彼もやりやすいと思います。

リアルレーシングでは毎年、年始にドライバーと(金石)勝智さんとご祈祷に行くのですが、そこで今年初めて太田君と会いました。その後にふたりでレーシングスーツの採寸に行くことになっていたので、僕は自分のクルマを取りにいったんです。

で、太田君にちょっと待ってもらって、合流して一緒に乗って出かけました。クルマを走らせ始めると、太田君が「塚越さん、ブラックでいいですか?」と言って、スタバのコーヒーを買ってきてくれていました。「うわあ、すごくいいヤツだなあ」と。そこですごく太田君に好感を持ちました。もう、すっかり太田君の術中にはまっていますね(笑)。
愛知県のりえさんからはもう一問。「今年のスーパーフォーミュラ、GTのチャンピオン予想はどこのチーム?誰がとりそう?」
それはもちろんスーパーフォーミュラはスリーボンド、GTはリアルレーシングです!
静岡県のsawahiroさんからの質問です。「ホンダの『ココが好き!』というところを教えてください」
僕がホンダに憧れたのはアイルトン・セナとアラン・プロストが活躍したマクラーレン・ホンダ時代のF1です。そこからホンダのドライバーになり、実際にレースに出場することになりました。ホンダを企業として見ると、もともとはバイクと軽自動車でスタートした会社で、時たまマニアックで変わったクルマを出すのが好きです。そして今でホンダジェットという飛行機をつくり、宇宙開発までしています。そういう突拍子もないチャレンジをすることが好きですし、スゴイところだと思います。
静岡県のsawahiroさんからはもう一問。「ラジコン・ミニ四駆に魅かれた理由を教えてください」
ミニ四駆は昔、漫画アニメ『爆走兄弟レッツ&ゴー!!』がやっていた子ども時代にむちゃくちゃやっていました。大人になって少しミニ四駆が流行り出していて、やりたいなあと思っていましたが、なかなかきっかけがありませんでした。そんな時にコロナ禍となり、子どもたちと一緒に何かできるといいなあと思って復活させました。

僕のYouTubeチャンネル『塚越広大MOTOR HOLIC 881』でも、まこやBUNGOだけでなく、いろんな人たちとも一緒に走ったり、勝負したりしていますが、ミニ四駆は本当に奥が深いし、難しい。最初は敷かれたレーンだけを走ればいいんだと軽く思っていましたが、大体、飛びだしてしまうんです。今はスロープがあってジャンプをしますし、レーンチェンジもあります。セッティングは細かく、自分がやっていた子どもの頃とまったく違います。

そのうち敷かれたレーンだけを走るのは物足りないなあと思って、ラジコンを始めました。10年ほど前に道上(龍)さんを始め、何人かのドライバー仲間と京商のラジコンをやっていたのですが、チームのタケイさんという方がもともと好きで、彼の力も借りて復活しました。オンロードは自分がレースをやっている環境で満足しているので、今はどっちかといえばオフロードをやっています。僕は四駆ではなく二輪駆動のラジコンをしているのですが、ラジコンのセッティングは基本的な考え方はレースと一緒ですし、パーツの名前も実車と同じなので、メカの勉強になっています。
福岡県のゆきさきはやとさんかたの質問です。「今はスーパーフォーミュラで開発テストをされていますが、スーパーフォーミュラでバトルしたいドライバーはいますか?
正直言って、スーパーフォーミュラはひとりでひたすら速く走りたいという気持ちがあるので、あまり誰かとバトルしたいという気持ちはないです。フォーミュラに乗っている時は何も考えず、とにかく速さを極めたいという思いが強いです。
三重県のTRIさんを始め、複数の方から質問です。「スーパーGTのレーサーの中で誰でも組めるとしたら誰と組んでみたいですか? また走りたいチームやマシンはありますか?」
誰ですかね? あんまりいないですね。スーパーGTで組みたいドライバーとして名前をあげるのは難しいですが、2006年のスーパー耐久第3戦十勝24時間に伊沢(拓也)さんと武藤(英紀)さんと出場したことがあるのですが、それがすごく面白かった。だからまた伊沢さんと武藤さんとスーパー耐久に出場したいです。

スーパーGTやルマンだと真剣に優勝を狙っていかないと行けません。もちろんスーパー耐久でも真剣に走りますが、もうちょっとゆるーく笑顔で走りたい。それこそ現役の選手だけでなく、小暮さんや年弘さんなどの新旧のホンダドライバー全員で1台をシェアして、一緒にみんなで走ってみたいです、
千葉県の鶴岡さんからの質問です。「今さらで申し訳ないのですが…2010年のスーパーGT第5戦SUGOで、ファイナルラップのホームストレートで小暮さんを抜いて1000分の25秒で初優勝した時の心境をお聞かせいただければと思います!」
僕としてはやれることは全部やり切りましたが、正直、勝てるとは思っていませんでした。ただゴールラインを横切った時に絶対に自分が前だという確信はありました。電光掲示板の順位が入れ替わったのもわかりました。でも無線で誰も声をかけてこないんです。「やったな」とか「おめでとう」とか、チームのスタッフは誰も言ってくれなかったので、「やっぱりダメだったか」と思っていました。

でも、やるだけやったし、まあ2位でもしょうがないかと思っていたら、ちょうどバックストレートエンドの馬の背コーナーあたりで無線が入って、「もう少しゆっくり走って戻ってきて」という業務連絡が来たんです。「わかりました」と返事をして「ところでどっちが勝ったんですか?」と聞いたら、「お前が勝ったよ」と言われました。

チームに「なんで勝ったと教えてくれなかったんですか?」と聞いたら、チェッカーのあとにみんなで喜んでいたので連絡が遅くなったと。まあ、僕のことは忘れられていたってことなんですけど、SPコーナーあたりからパルクフェルメまでは微妙な半周でした(笑)。
大分県のドラゴン2さんからの質問です。「右足ブレーキと左足ブレーキでは今のスーパーGTではどちらが速く走れますか? 数年前にあえて右足ブレーキでタイヤがニュートラルな状態を一瞬作るとお話されていたと記憶していますが、現在はどうなのかと思いまして質問させて頂きました」
基本的にはニュートラルな状態を作るというのは今も変わっていませんが、それを現在は左足でやっています。右足ブレーキはやめました。その理由はバトルしている時に踏みかえがネガティブな方向に出てしまうことがあるからです。例えば目の前でいきなり減速されて避ける時や、バトルの最中に微妙な速度調整が必要になった時に、踏みかえをするよりは左足のほうが応用がききます。だから左足ブレーキをしていますが、ドライビングのスタイルは変わりません。

僕はタイヤがニュートラルな状態というのを大事にしています。左足ブレーキだとアクセルを踏みながらブレーキもできますし、ブレーキをリリースしながらアクセルを被ることもできます。僕はその“かぶり”の時間が嫌なんです。加速している時間とブレーキをしている時間は大事ですが、アクセルとブレーキのどっちも踏んでいない時間を割と大事にしています。
栃木県のいけさんからの質問です。「次に買いたいクルマはなんですか?」
もうクルマは買わないと心に誓って10年ぐらい経つのですが、ついつい買ってしまうんですよね(笑)。欲しいクルマ、魅力的なクルマはいっぱいあります。でも、好きで買ったはずなのですが、自由に乗れないという状況が出てきてしまうのです。

例えば僕は今ホンダのNSX-R(02R)を所有していますが、雨が降ったらその後のメンテナンスをどうするとか、乗ったら価値が落ちるとか、そういう話が出てきてしまう。やっぱり購入したら、雨が降ろうが槍が降ろうが乗りたいじゃないですか。でも02とかは気を使ってしまうんですよね。ちゃんとメンテナンスされている状態で乗りたいのですが、どうしても維持するのにはお金がかかります。かといって乗らないでただガレージに置いておくのも嫌ですし、本当に難しいです。

その点、NSXのクーペは本当に大事にしながらどこでも、いつでも乗っているので、あれが一番気持ちいいですね。質問に戻ると、本当にいつも最後のクルマを探しているんです。クルマの終活というか、もう何年も前から一生をともにするクルマというのを考えて探しています。
栃木県のいけさんからはもう一問です。「スーパーGTのシリーズチャンピオンになったら何したい? 何欲しい?」
何をしたいと言えば、お礼参りをしたいですね。お礼参りといっても悪い意味じゃないですよ(笑)。今までお世話になった方々に「今までお待たせしました」とお礼参りをしたいです。欲しいものは正直、今は特にありません。