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ファンの皆さんからの質問に塚越広大が直接答えるという年に1回のスペシャル企画「Koudai on Koudai」。後編は「レースに関する質問」です。2016シーズンもスーパーフォーミュラとスーパーGTで戦うことになった塚越広大は、皆さんからの質問にどう答えたのでしょうか?

取材・文川原田剛
写真Honda、村上庄吾

「今季は体制も変わる。プラスに働くはず」

千葉県の下村世奈さんからの質問です。「2015年シーズンのレース活動を通して一番大変だったことはなんですか?」
そうですね……一番大変だったのは、フォーミュラで結果を残せなかったことです。トラブルもありましたし、マシンの調子もそんなによくなかったですし、カート時代を含めて自分のドライバー人生でもこんなに結果を出せなかったのは初めてのことでした。
滋賀県のにゃんこさんや三重県の藤原康正さんを始め、たくさんの方からの質問です。「2015年シーズンのベストレースは?」。藤原さんは「スーパーGT第7戦オートポリスでのラスト10周の追い上げが印象に残っている」とのことです。
オートポリスもよかったのですが、僕はそれよりも第3戦タイのほうが印象に残っています。タイはマシンの調子もよくなくて、正直、追い上げられるような雰囲気がなかったのです。でも前のグループのペースが落ちたことで差が詰まってきて、そのチャンスを利用して2台をうまく抜くことができ、3位に上がりました。ただ、3位になったあとは後ろから追い上げてきた12号車のほうがペースがよく、簡単ではなかったですね。300クラスのマシンとの巡りあわせがよかったことと、その処理がうまくできたことで、何とか12号車とのギャップを保つことができました。自分で言うのもなんですが、苦しい中でもうまいレースができたと思います。
兵庫県の佐内拓矢さんからの質問です。「今までで一番感動したレースはなんですか?」
シーズン終了後のノンチャンピオンシップレースですが、2013年のJAFグランプリ(富士スプリントカップ)です。このシーズンは、スーパーGTで勝てそうで勝てないレースが続きました。それでも最終戦までチャンピオン争いに加わっていたのですが、結果、タイトルに手が届きませんでした。僕自身もチームのスタッフも、みんながもどかしい気持ちを抱えたままで、シーズンを終えることになりました。でも、JAFグランプリでは5番手からのスタートでしたが、追い上げて優勝することができました。本当はシーズン中に勝ちたかったのですが、あのレースでチーム一丸となって優勝して、みんながシーズンを通してがんばってきたことが報われたというか、きちんと結果として残すことができました。それがうれしかったのです。またチームのスタッフはもちろん、応援してくれたファンのみんなに少しでも恩返しできたので、僕も感動したレースでした。
福島県の井上環さんを始め、たくさんの方からの質問です。「一番好きなサーキットはどこですか?」
最近だとオートポリスですね。オートポリスはいつもちゃんと走れます。
三重県の藤原康正さんからの質問です。「トークショーなどで、鈴鹿は不得意だとおっしゃっていましたが、具体的にコース自体がどのようにフィットしないんですか?」
僕自身、鈴鹿はもっとも走りこんでいるサーキットだと思いますが、ラインにしてもアプローチにしても、走り方がいっぱいあるような気がするんです。各セクターのタイムをまとめて、1周をトータルで速く走るのは本当に難しい。たとえばセクター1は速いけどセクター3は遅いとか、自分自身でちゃんと上手に走れたなと思ってタイムを見てみると、セクター3は遅いということがあるんです。逆に調子があまりよくなかったけど、セクター2は速かったということもあります。なんか走れば走るほど難しいサーキットです。
三重県のキョンさんからの質問です。「テレビで時々見かけるドライバーが悔しさからかピット内でモノを蹴飛ばしたり、投げつけたり、またはピット裏に行くようなシーンがありますか?
モノには当たりませんけど、不機嫌になることはありますよ。
三重県のキョンさんからはもう一問。「広大くんはレースに限らず、普段の生活で感情を態度に出すときはありますか?」
いつも笑ってはいますけど、泣いたり、怒ったりすることはあまりないですね。僕は怒る時も、感情を爆発させるタイプではなく、静かにひたひたと怒るタイプなんです(笑)。
愛知県の小川智子さんからの質問です。「2015年はパドックパスを購入したものの、ピットウォーク以外でパドックにいることにドキドキして、いまいち使いこなせていませんでした。パドックで、『これは見た方がいい!』というオススメなポイントを教えてください」
パドックにはドライバーがウロウロしているので、意外な素顔を見られると思います。それに好きなドライバーの所属するチームの周りにいれば、レースの時にドライバーがどんな動きをしているのかを確認できて、何か新しい発見があるかもしれません。
愛知県の小川智子さんからもう一問です。「2015年にやっともてぎデビューができました!サーキットはとっても楽しめましたけど、ご飯が困ってしまいました。オススメのお店を教えてください」。
サーキットの中にはいろいろなレストランがありますが、いったん外に出てしまうと、茂木は小さい町なので、なかなか食事は難しいかもしれませんね。いっそのこと、宇都宮まで足を伸ばしてみるのもいいと思いますよ。いろいろなお店があっていいかもしれません。最近、宇都宮と茂木の間には道路が新しくできたので、サーキットへのアクセスもよくなっています。宇都宮に行ったら、やっぱりギョウザを食べてほしいですね(笑)。
宮城県のIzanana11さんからの質問です。「ファンの応援はドライバーにとって力になってるものなんですか?」
もちろんですよ! やっぱり応援してくれる人がいないとさびしいですしね(笑)。ひとこと「がんばってください」と言われるだけで、すごくうれしいです。
三重県の山門剛さんからの質問です。「申年の48歳のおじさんです。毎回鈴鹿には鈴鹿在住なので応援に行っています。塚越さんの走りには見る人を魅了するアグレッシブさがありますが、どこからそんなパワーが出るのですか?」。他にも「レースの原動力は何ですか?」という質問もいくつか届いています。
僕は自分自身の走りをアグレッシブだと思っていません。自分としては、きれいにスムーズに走ることを理想として求めています。だから見ている人とのギャップがあるんですよね。『SUPER GT +(スーパーGTプラス)』でも“弾丸ボーイ”とか言われて(笑)、アグレッシブなイメージが強いみたいなのですが、自分が思い描いているものとは違うんですよね。でも、僕の走りを見て元気になってくれるのは素直にうれしいです。自分のパワーの源は、やっぱり乗っていて楽しいからですかね。マシンに乗っている時には何も考えずに済みますし、ただ純粋に速く走ることだけを考え、運転を楽しんでいます。それが原動力になっている部分が大きいと思います。
石川県の実川光生さんからの質問です。「ラー飯能をNSX CONCEPT-GTもしくはSF14で走れるとしたら、どちらのマシンで走りたいですか?」
いやぁー、どっちも難しいと思いますが……まだフォーミュラのほうが可能性があるかもしれませんね。GTはタイヤが暖まらないので厳しいと思います。正直、GTでは怖いですよ(笑)
福島県の井上環さんと長野県のなつさんからの質問です。「スーパーGTとスーパーフォーミュラに参戦していますが、どっちが好きですか?」
予選はスーパーフォーミュラで、決勝はスーパーGTです。一周の極限の速さを求めるというのがフォーミュラなので、予選一発はスーパーフォーミュラのほうが楽しいです。レースになると、今度はスーパーGTのほうがいろんな展開があるので、面白いです。特に僕は追い上げのレースが多いですから、レースはスーパーGTですね。
千葉県のセフィロスさんからの質問です。「2016年に向けてNSX CONCEPT-GTに求めるものは何ですか?」
まあ、速ければ何でもいいですね(笑)。あえて言えば、NSXは“跳ねる”というイメージがあるので、跳ねないようにしてほしいです。
東京都のなみえさんからの質問です。「ウォーミングアップ走行と決勝レースで違うヘルメットを着けているようですが、その理由を知りたいです。練習用とレース用と何か違いがあったりするんですか?」
僕はヘルメットが2種類あって、その日によって、どちらをメインにするのかを決めています。雨などで中のクリアやフィルムを剥がしたくないので、決勝まではなるべくバイザーや捨てバイザーを使いたくないんです。それで決勝用とそれ以外のヘルメットを使い分けしています。どっちをメインにするのかは、その日の気分で決めています。
東京都のなみえさんからはもう一問。「スーパーGTとスーパーフォーミュラなど、カテゴリーによってヘルメットの造りに違いがあったりするんですか?」
帽体などヘルメットの基本的な仕様は変わりませんが、スーパーGTのほうがヘルメットに開いている穴が多いし、ダクトもついています。スーパーGTにはエアコンがついていますので、冷たい空気がより頭に入りやすいようになっているんです。
福井県の吉江正勝さんからの質問です。「もう45を越えるオッサンからの質問です。20年振りに、一昨年からまた走行会に復活しました。家族の反対もありますが、あの雰囲気と緊張感が忘れられず復活しました。何かアドバイスをいただけませんか?」
僕はブレーキをぎりぎりまで行くというのが苦手で、その分、コーナーを早く立ち上がろうというタイプです。コーナーをちゃんと立ち上がれるようになったら、ブレーキをちょっとずつ詰めていく。いきなりブレーキをぎりぎりまで詰めていくと、シフトダウンなどもおろそかになってしまうので、うまく走れないんです。だから、まずは余裕を持ってコーナーに入っていけるぎりぎりのところで走ってみる。それが安全のためにもいいかもしれませんよ。あと、ひとつのコーナーのブレーキでがんばってタイムを上げようと考えてはいけません。一周の中にはコーナーがいっぱいあります。一つのコーナーで0.01秒でもいいので、確実にタイムを上げる。それが積み重なれば、結果的に大きなタイムアップにつながっていきますよ。
静岡県の佐藤充希さんからの質問です。「2015年4月からカートを始めました。(小学校1年)雨の日の走行がまだ上手に走ることができません。特にコーナーが上手に曲がるにはどうしたらいいですか教えてください」
雨の日のコースは、ライン取りひとつにしても自由なんです。「ドライだとこうだから」という先入観を捨てて走るのがいいと思います。コーナーリングは必ずしもアウト・イン・アウトが正しいと思わないで、とにかく速いスピードで曲がれるラインを探す。それが大事です。水たまりにも入ってはいけないというわけでもありません。水たまりに入っても速いんだったら、そうすればいいんです。
栃木県の泉口空雅さんからの質問です。「ぼくは今10歳です。レースに興味があります。車とバイク、どっちかまだ迷っています。カートを始めるとしたら、最初はどんなことに注意すればいいですか?」
カートを始めるとしたら、まずはきちんと止まれるようにすること。ブレーキがちゃんとできないと、怖いし、危ないですからね。それに速く走るにしても、コーナーに入っていく時にきちんとブレーキができないといけません。ただ、上手なブレーキングというのは、何もコーナーに進入する時にぎりぎりまでブレーキを遅らせるということだけはありません。速度調整のためにブレーキの技術を学ぶことが大事だと思います。僕のスクール(ラー飯能で開催)でも、まずはブレーキをちゃんときるように教えています。もしカートに興味を持ったなら、ぜひ、僕のスクールに来てください!
三重県のscp10userさんからの質問です。「塚越選手は疑うことなき日本のトップドライバーで、もちろん目指すのはF1だと思いますが、他に挑戦してみたいカテゴリーはありますか? 雨で滑りやすい、運転の難しい路面状況で誰よりも速い塚越選手は、ラリーでも強いのではないかと想像しちゃいますし、世界の頂点カテゴリーであるル・マンやニュルブルクリンクの24時間耐久レースでも走ってほしいと思います。電気自動車や燃料電池車で史上最初の優勝者になるという挑戦もスゴイんじゃないかと思いますが、F1以外に興味のあるカテゴリーはありますか?」
ラリーカーで雪上とか走ってみたいと思いますが、ラリーは競争じゃないので、正直、あまり魅力を感じません。ル・マンやニュルブルクリンクには挑戦してみたいと思います。あとはアメリカはNASCAR(ナスカー)も走ってみたいですね。
三重県のscp10userさんからもう一問です。「たとえばダカールラリーや24時間レースに挑戦するとしたら、一緒に組みたいドライバーはいますか?」
誰がいいですかね〜。本当に難しい質問をしますね。うーん、難しいですね……。ちょっとすぐには思いつかないので、考えておきます(笑)。
広島県の前田隆さんからの質問です。「5年後は自分のビジョンは? レーサーとして、プライベートで自分はどうなっていると思いますか?」
5年後だと、ドライバーとしてはまだ現役でバリバリ走っていると思います。プライベートでは、今、ラー飯能のオーナーになって活動もしていますので、ラー飯能をもっとよくする。それにプラスして、他のビジネスもしてみたいですね。最近、ビジネスに興味があるんです。ビジネスの世界もレースと似ていると感じます。うまくやるために戦略があって、勝ち負けというのも数字で出るので、すごく面白いですよね。でも株とか投資にはあまり興味がなくて、リアルなビジネスを広げていきたいんです。レース以外のビジネスを広げていった結果、巡り巡ってレースや車につながっていけば面白いと思っています。
兵庫県の阿部浩智さん、千葉県の福原美穂さんを始め、たくさんの方からの質問です。「スーパーGTでコンビを組みたいドライバーは誰ですか?」
2016年、スーパーGTで新たに組むことになった小暮(卓史)さんです。やっと念願がかないました。僕がちょうどスーパーGTを始めた頃、小暮さんの速さがすごく光っていて、小暮さんとはいつか組んでみたいと思っていました。それに小暮さんは僕と似ているところがあって、一般の乗用車を含めて、本当に車好きなんです。だから同じチームで走るのが、すごく楽しみです。あとは伊沢さんですね。(山本)尚貴の走りはわかりませんが、左足ブレーキなので、どうなのかなって。とりあえず、右足ブレーキの人がいいですね。
三重県の森川遥貴さんからの質問です。「いつかこのレーシングカーに乗ってここを走ってみたい、というのはありますか?」
やっぱりF1マシンでモナコを走ってみたいですね。
岐阜県の吉田さんを始め、たくさんの方からの質問です。「2015年は塚越選手にとってどんなシーズンでしたか?」
スーパーGTは武藤(英紀)さんと初めて組むことになりました。それまで(金石)年弘さんとずっとコンビを組んで、いろんなことを勉強させてもらいました。そして2015年は自分がエースとして武藤さんを迎え入れることになりました。もちろん武藤さんは先輩ですが、自分のほうがチームに所属している期間も長いですので、きちんと成績を残すだけでなく、自分がチームを引っ張っていかなければならないという使命感を持ってシーズンに臨みました。

チームに勢いをつけるためにはなるべく早く結果を出したいと思っていましたが、第3戦のタイで3位に入ることができました。これは武藤さんにとってはアメリカのインディカーから帰ってきてから初のGT500クラスの表彰台となり、僕にとっても大きな自信になりました。

そのあとはトラブルやアクシデントがあり、タイトルを獲得することができませんでしたので、あまり満足できるようなシーズンではありませんでした。でも武藤さんと一緒に力を合わせて走ることができましたので、本当に楽しいシーズンでした。

逆にスーパーフォーミュラでは人生で初めてノーポイントでシーズンを終えることになり、放心状態で何も言葉も出ないような感じでした。悔しいとか悲しいとか、そういう感情でもなく、本当に言葉にならないような感じでした。2016年はそんなことにならないように、どんどん速さを見せつけていかなければならないと思っています。

2016年シーズンはスーパーGTのチームメイトが変わり、スーパーフォーミュラではエンジニアも変わるので、それがプラスに働くと思いますので、すごく楽しみです。2016年シーズンはスーパーGTとスーパーフォーミュラの両方できちんと結果を残して、最終的にはダブルタイトルを取れるように頑張りたいと思います。

Koudai on Koudai 2015-2016 前編