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年に1回のスペシャル企画「Koudai on Koudai」。ファンの皆さんからの質問に塚越広大が直接答えるという企画は今年で9回目を迎えました。今回、皆さんから寄せられた質問数は過去最高となりました。本当にありがとうございます。後編は「レースに関する質問」です。2015シーズンもスーパーフォーミュラとスーパーGTで戦うことになった広大ですが、皆さんからの質問に広大はどう答えたのか? お楽しみに!

取材・文川原田剛
写真Honda、村上庄吾

「今は結果を残さないといけない。ドライバーとしては、それしかない」

後半はレースに関する質問です。宮城県の“日下尚哉さん”からの質問です。「何歳からモータースポーツに興味を持ちましたか?」
小学校に行く前から、サーキットにはよく行っていました。父がモータースポーツをすごく好きでレースをよく見にいっていたので、父についていく形でサーキットにいっていたのです。そういう環境で育ったので、物心つくがつくころにはモータースポーツに興味がありました。それにクルマも好きで、ミニカーでよく遊んでいました。
宮城県の“陶山市路さん”からの質問です。「どうしてレーサーになろうと思ったのですが? そのきっかけは」
今言ったようにクルマやモータースポーツが好きで、クルマを速く運転したいと思ったからです。具体的には、アイルトン・セナというドライバーが好きで、セナのように世界最高峰のF1というクルマを運転したいという気持ちが自然と芽生え、レーサーになりたいと思うようになりました。
岐阜県の“高井一輝さん”からの質問です。「レース人生で今までにとても印象に残っている場面を教えてください!!」
純粋な喜びでいえば、2002年のカートの鈴鹿選手権シリーズMFCクラスでチャンピオンになった時が一番大きいかもしれません。あの時は勝った負けたじゃなく、僕のレース人生がかかっていましたから。もちろん、今でも1戦1戦にレース人生はかかっているのですが、あの時のレースは強烈に印象に残っています。
埼玉県の“内田智也さん”からの質問です。「将来レーシングドライバーになろうと思っている中学3年生です! 塚越選手もカートから始めて今ではスーパーフォーミュラやスーパーGTで活躍されていますが、今までのレース人生の中でもっともつらかったこと、もっともうれしかったことを教えてください!!」
うれしかったことは、先ほど言ったように2002年のカートの鈴鹿選手権シリーズMFCクラスでチャンピオンになった時です。つらかったことは、2008年にGP2のテストをして帰国した年末にホンダがF1を撤退することになり、「来年のシートはない」と言われたことです。あれはつらかったですね。その時まで、僕は速く走れれば自分の人生はなんとかなると思っていたんです。でも、その時に初めてレースができなくなるかもしれないという状況になりました。あの時は本当にキツかったです。
神奈川県の“五郎川達広さん”からの質問です。「なぜそんなに速いのですか?」
全然速くないです。もっと速くなりたいです。でも僕のレース人生をあらためて振り返ると、今の自分の根本的なものはカート時代に学んだことが大きいと思います。特にカートを始めてからの最初の4年間、僕はレースに出場していません。タイヤも変えず、セッティングも変えず、ただガソリンだけ入れて、ひたすらカート場で走っていました。その中で「もっと速く走るためにはどうすればいいのか」ということを、一生懸命に考えていました。ライン取りや自分のドライビングなど、本当にいろんなことを考えながら走っていました。それが良かったと思います。「どうしたら速く走るのか」と自分で考えるということは、プロになった今も大事です。それをカート時代に学べたのは大きかったです。
岡山県の“ヨーコさん”からの質問です。「レースは基本土日にありますが、予選が終わった日の夜は何時くらいに寝るのですか?」
ホテルに戻って、寝る準備ができたらすぐに寝ます。僕は普段から10時とか11時には寝ますので、かなり早めに寝るほうだと思います。ちなみにレースの時に起きるのは出発の1時間前です。
神奈川県の“でらさん”からの質問です。「レース本番前に必ずすることはありますか?」
ゲン担ぎは特にないですが、家をきれいにしていくぐらいです。僕は、部屋は自分の頭の中だと思っていますので、部屋が乱れていることは頭の中も乱れていることになりますね(笑)。だからレースの前には自分の部屋を整理整頓してから出かけます。それに最近、自分は何をしている時に落ち着くのかと思って、いろいろ考えていたら、掃除機をかけている時に落ち着いているということもあるんですよね(笑)。
三重県の“りある親子さん”からの質問です。「2014年からKEIHINのレーシングスーツが新しくなりましたが、以前の青いスーツと2014年の白いスーツ、あとスーパーフォーミュラのHPの白黒のスーツでは、どのスーツが一番お気に入りですか?」
僕は青のKEIHINが一番好きです。自分がデビューした時の印象が強いですし、KEIHINといえばブルーというイメージがあるので、一番好きですね。その中でも2012年〜2013年ぐらいに使用していたベルトのないパターンのスーツがあるのですが、あれが一番のお気に入りです。
神奈川県の“みのやまさん“からの質問です。「2014年、メインのヘルメットをオリジナルに近いカラーに戻しましたが、何か思うところがあってのことですか?」
2013年の暮れに、たまたま占いをしてもらったからです(笑)。半分は冗談ですが、半分は本当で、ちょうど何色にしようかと考えていて、「いろんな色の組み合わせをしたけど、やっぱり赤と青かな」と思っていた時に、たまたま占いをしてもらいました。そしたら、「あなたのラッキーカラーは赤と青」と言われ、占いの結果が後押ししたという感じですね。
鹿児島県の川畑大亮さん、栃木県の横田正和さんなど、多数の方からの質問です。「2014年からスーパーGTのマシンがHSVからNSX、スーパーフォーミュラも新型車両に変わりましたが、どちらのほうが走りやすかったですか? それぞれのマシンのフィーリングを教えて下さい」
スーパーGTに関しては、現時点ではHSVのほうが好きです。NSXはまだ熟成が進んでいませんし、見た目もHSVのほうが好きです。個人的にはNSXはもうちょっと幅広で、低いほうがカッコいいのになあ……と思います。

フォーミュラに関してはスイフトからダラーラへ変わりましたが、ダラーラのほうが断然カッコいいですね。それに軽いので、運転していても機敏です。でもエンジンに関しては、NAのほうがレスポンスがよくて、乗っていて気持ちいいですね。ターボエンジンはターボラグがありますし、セッティングがいろいろ細かくあって大変ですが、ストレートは速いし気持ちいいですね。ただ、ターボは音が悪いですよね。あれは何とかしてほしいかな、と思っています。
茨城県の“玉野健太さん”からの質問です。「GTで自分のスティント前に何をしていますか? 必ずしていることってありますか?」
相方が無事に帰ってくるのを祈りながら、モニターを見ているという感じです。
茨城県の“胃の”さんからの質問です。「GTのパートナーを自由に選べるとしたら、指名したいドライバーは誰ですか?」
パートナーとなると、伊沢さんか小暮さんがいいですね。まず右足ブレーキで乗っているというのが一番の条件です。伊沢さんはフォーミュラでチームメイトになっているので、どんなドライビングをするのかがわかっています。小暮さんは、右足で走っているし、クルマの作り方も似ていると思います。そういう意味で、結果を残す上で同じ右足で乗っているドライバーのほうがいいです。ちなみに(山本)尚貴は同じ栃木なので、イヤです(笑)
大阪府の“和田卓磨さん”からの質問です。「新型のNSXは前半戦では熱害があり、ある雑誌には『コックピットの樹脂製パーツが溶けた』と書いてありました。実際、ドライビングしていて気分は悪くなりませんでしたか?」
気分が悪くなったことはないですが、とにかく暑かったですね。第3戦のオートポリスの時が一番暑かったのですが、僕も年弘さんも「暑い」とあまり言わなくて、何かの会話の時にポロっと暑いと言ったら、お互いに顔を見合わせて「やっぱりそうだよね」という話になりました(笑)。それで室内の温度を計ったら、やっぱり暑かった。でも、それほど気になるほどではなかったですよ。
大阪府の“和田卓磨さん”からもう一問。「過酷な状況下でも冷静にドライビングするために、どのようなトレーニングをしていますか?」
レースでは基礎体力が重要ですので、2012年からお世話になっているスポーツトレーナーの鎌田貴先生のもとでトレーニングを重ねています。今、体力的にまったく問題なくレースできているのは、鎌田先生のおかげだと思っています。
大阪府の“from ARAKI.さん”からの質問です。「よくSUPER GT +で「弾丸ボーイ、塚越広大」と紹介されていますが、「弾丸ボーイ」と言われ、どのように思っていますか?」
いやあー「もうボーイじゃないよね」と周りからも言われますし、自分でもそう思いますね(笑)。でも悪い気はしてないですよ。まあ、永遠の少年ということで(笑)。
奈良県の“小栗一輝さん”からの質問です。「ぶっちゃけ、スーパーGTとスーパーフォーミュラのどっちが好きですか? あと、得意なのはどっちですか??」
直球ですね(笑)。うーん、やっぱりフォーミュラのほうが好きですね。でもレースとしては、スーパーGTのほうがおもしろいかもしれないですね。スーパーフォーミュラは純粋に速さを競うレースなので、乗っていて楽しいんです。どっちが得意というのはないです。
滋賀県の“香水美穂さん”からの質問です。「2014年シーズンで一番乗れているな! と感じたレースはどれですか? その時の気持ちも教えてください」
スーパーGTの菅生のレース後半ですね。雨になって、路面がちょい濡れの状況になったから、レースがフィニッシュするまでの間です。あの時は天候がコロコロ変わる中で、最初にどっちのタイヤで行くのかという時点で、正直、外れてしまったわけです(※広大はスリックタイヤを選択)。13番手でコースに復帰しましたが、走っている時は周りに誰もいなくて、18号車が遠くに見えるという感じで、ちょっと退屈なレースでした。そんな状況で走っていたら、雨が降ってき、ちょっとずつ18号車に近づいていきました。そしたら18号車はコースアウトしちゃったんです。

で、次に誰と戦うのかなと思っていたら、チームから「タイヤをどうする? 路面状況は?」と聞かれました。そのうち雨が強くなり、結局チームからは「1回ピットに入れ」と指示があったのですが、その時にはもう他のチームはすでにピット作業を終えて、ウエットタイヤに交換していました。「今さら入っても仕方ない」と思いましたし、乗っていてもそんなにフィーリングは悪くなかったので、「このままスリックで行かせて下さい」とチームに話しました。僕の判断をチームが信じてくれ、幸い雨も段々と弱まってきました。僕としても、「このままスリックタイヤで行く」と言ったこともあり、ポジションを上げて帰らなければならないと思い、必死に走っていきました。

あとから聞いたら、他よりもすごく速かったと聞きましたが、自分自身でもすごく調子が良かったと思います。よくゾーンに入るといいますが、あの時はそうだったのかもしれません。「ここを外してはいけない」というラインしか見えませんでしたし、そこしか走っていませんでした。それが良かったと思います。
三重県の“しげち〜さん”からの質問です。「2014年のベストレース/ワーストレースをスーパーGTとスーパーフォーミュラそれぞれでお聞かせ下さい!」
スーパーGTのベストは今の菅生で、ワーストは第6戦の鈴鹿1000kmです。鈴鹿では勝てるチャンスがあったレースで、第1スティントは完璧でした。優勝した36号車とは作戦が違い、僕たちは1回ピットストップが少なかったんです。それで行っていたのですが、僕が走った第3スティントの時には、このままのペースでは勝つのはちょっと厳しい状況になって、ずっとプッシュしなければなりませんでした。とにかく「勝たなければいけない!」と思って必死にプッシュしていたら、130Rでスピン。本当に惜しいレースでした。

スーパーフォーミュラは第5戦のオートポリスがベストですね。ずっと不振が続く中、予選でもいいポジションまで行けて、ポールポジションとすごく接近することができました。走っていてもすごく楽しかったです。ワーストは第6戦の菅生ですね。自分のミスでスピンして、それを取り戻そうとして焦ってしまい、さらに給油にも失敗して動揺してしまいました。それでアウトラップでコースアウト……、最悪のレースでした。
愛知県の“山内隆寛さん”、宮城県の“いたこまさん”を始め、たくさんの方からの質問です。「スーパーフォーミュラとGP2のクルマはまったく違うものなのでしょうか?」
まずスーパーフォーミュラのほうが全然速いです。その上クルマもしっかりしているし、きれいですしね。スーパーフォーミュラよりも上のマシンといえばF1しかないと思います。そのF1に対しても、コーナーリング速度ではスーパーフォーミュラのほうが速い。GP2はどちらかといえば、F3に近いイメージです。しかもGP2のシャシーはもう何年も使われているので(※2011年から使用されている)、あまりきれいじゃないんです。それにピレリタイヤの特性も特殊で、熱に敏感です。もちろん国内でもタイヤへの熱の入り方を気にしますが、それとは比にならないぐらい丁寧にしないといけません。それはすごく勉強になりましたが、とにかく特殊です。コーナーも攻められるという感じではありません。パワーはスーパーフォーミュラのほうがありますね。
大阪府の“まちゃひろさん”からの質問です。「鈴鹿サーキットで得意なセクション、コーナーはどこですか?」
鈴鹿は、走れば走るほど新しい発見があって、本当に難しいコースです。正直あまり得意じゃないです(笑)。過去にもあまり鈴鹿でいい思い出はありません。フォーミュラドリームと2006年にF3で初優勝を飾った時ぐらい。あとは、クラッシュしたり、チャンピオンを逃したり……。特に鈴鹿1000kmはいい思い出がありません。初めてスーパーGTに出た時(2008年)はフリー走行でいきなり130Rでコースアウトし(バリアに)刺さりましたし、2009年はレース中に伊沢さんと接触し、2010年だけ唯一まともに走ることができました。2011年は38号車と追突してしまったし、2012年は大クラッシュしてヘリで病院に運ばれ、2013年は黄旗無視でペナルティを受け、2014年もクラッシュ、本当にいいことがない(苦笑)。いいイメージがないんです、鈴鹿は。
茨城県の益子拓己さんからの質問です。「一番得意としているコースはどこですか? その得意なコースの中でも一番好きなコーナーはどこですか?」
セパンは得意だったのですが、レースカレンダーから外れてしまったんですよね。オートポリスはあまり好きじゃなかったのですが、最近は好きです。なんか攻略のポイントをつかんできたような気がします。どこのコーナーが好きだということはないのですが、全体的なリズムが僕に合っていると思います。
栃木県のヒロム147さんを始め、たくさんの方からの質問です。「ズバリ! 小林可夢偉選手と戦いたいですか?」
そうですね。意外と可夢偉とはカート以外はまともにレースをしていないので、またどっかのカテゴリーで一緒に走れたらうれしいですね。
栃木県の“藤井裕亮さん”、埼玉県の“もえはんさん”、北海道の“FUJIspeeding1さん”など、茨城県の“高橋徹さん”など、多数の方からの質問です。「将来のビジョンは? F1を含め世界で活躍することをどう考えていますか?」
自分としてはF1で戦いたいという思いがありますので、そこに向けて全力で頑張ることが僕にとって一番の課題です。そのためには、国内だろうが、結果を出さないといけません。まずは目の前にあるスーパーフォーミュラとスーパーGTの両方で勝って、チャンピオンになる。世界だろうか、日本だろうが今は結果を残さないといけない。ドライバーとしては、それしかないです。
最後にファンのみなさんに今シーズンの意気込みをお願いします。
今シーズンも国内のスーパーフォーミュラとスーパーGTで戦うことになりました。両シリーズともにチームメイトが新しくなりますが、できるだけ早く優勝し、シリーズチャンピオンになるために全力を尽くします。それとは別に、モータースポーツの普及活動もしていきたいと思っています。これまでお世話になった(金石)勝智さんを始め、たくさんの人に恩返しをしていかないといけないと思っています。そのひとつとしてカートのキッズスクールを行ったりして、子供たちの育成や、もっとレースの認知度を上げるためのモータースポーツの普及活動などにも力を入れたいと考えています。でも、それらの活動を本格的にやるのは現役を終えてからの話です。とにかく今年は参戦するレースで勝つ、チャンピオンになるために全力を注ぎたいと思います。そして海外で戦うチャンスをもう一度つかみたいと思っていますので、応援をよろしくお願いします。

Koudai on Koudai 2014-2015 前編