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Koudai on Koudai 2016-2017

ファンの皆さんからの質問に塚越広大が直接答えるという年に1回のスペシャル企画「Koudai on Koudai」。今回も後編として「レースに関する質問」をピックアップしました。「2016年は本当に悔しいシーズンになりました」という広大は、みなさんからの質問にどんなふうに答えたのでしょうか?

取材・文川原田剛
写真Honda、村上庄吾

「これまでどおり、速さを追求していきたい」

三重県のうずらゆういさんを始め、たくさんの方からの質問です。「昨年はいろいろなことがあったと思いますが、良かったことと悪かったことを教えて下さい」
悪かったことは、スーパーGTでNSX CONCEPT-GTのパフォーマンスが良くなかったことですね。結局、シーズン未勝利に終わり、僕もホンダ陣営も本当に悔しかったですし、残念な思いをしました。良かったことはNSXを無事に購入できたことですね。当初の値段よりも高かったですけど、何とか購入できました(笑)。あと良かったことは、皆様に報告は遅れましたが、昨年の8月に結婚したことです。
三重県のscp10userさんからの質問です。「2016年はスーパーフォーミュラでは担当エンジニアが交代し、マシンのカラーリングも変わりました。スーパーGTではペアを組むドライバーが小暮さんに変わり、とても変化の多い一年だったと思いますが、もっとも大きい変化はどんなことでしたか? また2017年に向けてはどう変わりたいですか?
本当に2016年はいろいろ変わったシーズンでしたね。特にエンジニアが変わったことで、今までとはコミュニケーションの取り方や、クルマの雰囲気も変わってきましたね。それでよくなった部分と、逆にコミュニケーションが足りなくて、あとでじっくり話してみたら、お互いに受け取り方が違っていたということがありました。いい悪いはありましたが、結果としてお互いを深く知ることができたので、2017年はもうちょっとスムーズに戦えるはずです。それが成績に結びつくと思っています。
栃木県の柴田泰司さんからの質問です。「2017年から30代になられて、いろいろと変わってくると思います。そこで、これからのレーサーとして変えていきたいこと、変えなければいけないと感じていることはありますか?」
年齢が変わったからといって、何か変わるというのはないですね。変わったといえば、もう若手じゃないので、周りの人からいろいろ言われることがなくなることぐらいですかね(笑)。真面目な話、レーシングドライバーにとって年齢はあまり関係ないと思います。何歳だろうが、求められることは速く走るということです。変えていきたいことは特にないです。これまで通りに、速さを追及していきます。
埼玉県のもえはさんからの質問です。「レース前や大事なことの前に行っているルーティンがあったら教えてください!」
特に決めていることはないです。あまりそういう決め事をつくってしまうと、できなかったときに不安になってしまうので、そういうことはしないようにしています。
兵庫県の阿部浩智さんからの質問です。「レースで、一番緊張する瞬間はどんな時ですか?」
スーパーフォーミュラはスタートの時が一番緊張します。予選は、それほど緊張することはありません。やっぱりレースが始まる瞬間、スタートですね。スーパーGTはドライバー交代して、発進する時が緊張します。「ドアを開けるのに手間取ったらどうしよう……。シートベルトをきちんとできなかったどうしよう……」などと考えてしまいますから(笑)。
東京都のみなえさんからの質問です。「スーパーフォーミュラのレースで、グリッドウォークの時間からスタートまでの時間はどんな心境でいるんですか? 緊張でバクバクになるのか、それとも冷静にいるのでしょうか? 
なるべく普通にしています。集中するわけでもないし、リラックスするわけでもないし、普段の生活の時と変わらないようにしています。そういうふうにしながら、「今日は意外に緊張しているな」とか、「リラックスしているな」とか、自分の気持ちを受け入れる時間になっています。どうせレースの時間が迫れば、勝手に集中するし、緊張するんですから。「リラックスしよう」と思っている時点でもうリラックスしていないんですよね(笑)。だがら、繰りかえしになりますが、なるべく普通にしています。
三重県のChaboさんからの質問です。「ドライはもちろんですが、雨(チョイ濡)のレースで抜群の速さがありますが早さがあります。雨のレースではマシンの差が出にくく、ドライバーの腕の差がハッキリ出ると言われます。かつてアイルトン・セナが雨に強かったように本当に上手い(強い)ドライバーは雨の日にわかると思っています。そこで質問ですが、雨のレースで速く走るために一番大事なポイントは何ですか?」
コース上の水量とラインを早く把握することだと思うのですが、そのためには固定観念や先入観をなくすることが大事です。昨年、スーパーフォーミュラの富士の予選でストフェル(・バンドーン)が変わったラインを走っていました。富士を走り慣れた日本人ドライバーは決して通らないようなラインでした。違った文化で育ったドライバーならではのチャレンジだったと思います(※結果的にバンドーンはポールポジションを獲得)。そればすごく勉強になりました。
Chaboさんからもう一問です。「雨の日に得意なサーキットはどこですか?」
雨のサーキットはどこも好きじゃないです。レーシングカーはいくらダウンフォースが強いとはいえ、タイヤが太いので、水たまりがあるところではハイドロプレーニングを起こしてしまいます。そうなるとハンドルやブレーキがきかなくなります。レースではスピードがスピードだけに吹っ飛んでいきますので、本当に怖いです。特に路面の舗装をしたあとのコースは、油が浮いているので怖いです。岡山とオートポリスは路面を変わっているので、雨が降ったら、結構怖いと思います。
静岡県の寺田慧さんからの質問です。「塚越選手が現在参戦されているシリーズ以外で、参戦してみたいシリーズはありますか?」
何度も言っていますが、やっぱりF1ですね。最近はラリーもおもしろそうだと感じています。世界ラリー選手権(WRC)のマシンはカッコいいので、ホンダもラリーをやらないかなって思ったりしますね(笑)。
三重県の“ムーミン”さんからの質問です。「国内6カ所とタイのコースをすぐに描くことはできますか?」
できると思います。じゃあ書いてみましょうか。タイはちょっと難しいかもしれませんが……(約3分ほどで、A4サイズの紙にすべてのコース書き上げる)。スペースの関係であんまりうまく書けてないですが、こんな感じです(笑)。

三重県の猫のココちゃんからの質問です。「レースの時の部屋割りはどうなってるんですか? 例えばスーパーGTでコンビを組む小暮卓史選手や、スーパーフォーミュラでチームメイトだった伊沢拓也選手と同じ部屋なんですか?」
相部屋ということはないです。レースの時は、若いときからいつも一人です。唯一、F3ドライバー時代に開催されたHonda Racing THANKS DAYの時は、伊沢さんと同じ部屋だったというのは覚えています。
茨城県のいのさんからの質問です。「ピットウォークやパドックなどで、緊張してしまって選手とどのように接していいのかわかりません。『がんばってください』とか『応援しています』とかは、たくさんの方から言われていると思います。こう言われるとうれしいというものがあったら教えて下さい
どんなことでも声をかけてくれるのは、うれしいです。「がんばってください」とか「応援しています」とか、なんでもうれしいです、でも「ありがとうございます」は意外に少ないんです。サインをしても、写真を一緒にとっても、お礼を言わずにそのまま行ってしまう方も結構いるんです。それはさびしく感じますね。

あと自分の希望をはっきりと言ってくれたほうがうれしいです。なんとなく僕らも「サインがほしいのだろう」とか「写真を撮りたいんだろうな」というのはわかるのですが、はっきりと「サインください」とか言われたほうがうれしいです。
いのさんからもう一問です。「ピットウォークやパドックなどで、プレゼントを渡された時に、これは困る、これがうれしいというものがあったら教えて下さい」
お菓子はよくいただくのですが、シーズン中は控えていますので、なるべく渡さないでほしいと思っています。お菓子は嫌いじゃないですし、食べたい気持ちはあるのですが、やっぱり身体のことを考えるとなかなか食べられません。お菓子よりは食べ物がいいですね。例えば、毎年うどんやニンニクのおしんこなどをくれる方がいるのですが、そういう皆さんのオススメの食べ物がうれしいですね。あと昨年はドレッシングやコーヒー豆もいただいたのですが、それもうれしかったです。
東京都のpurisakiさんからの質問です。「ラー飯能に塚越選手に会いたくて週末足を運ぶのですが、なかなか会えません。どうすれば塚越選手に会えますか?」
レースやスクールがある時は、スケジュールが空いている限りは必ず行くようにしています。それ以外は平日になってしまうので、あまりいないですね。だからイベントが開催される時に来てほしいです。ラー飯能でお会いしましょう!
埼玉県のちゃんだいさんからの質問です。「今度、初めてカートに挑戦してみようと思うのですが、速く走るコツや気をつけたほうがいい点などありましたら、教えてください」
多くの人が「速く走るためにはアクセルをいかに目いっぱい踏むのか」と考えがちですが、重要なのはしっかりと止まることです。ブレーキでしっかりと速度を調整できないと速く走れませんし、クラッシュやコースアウトにもつながります。まずはブレーキを上手に使うことを心掛けてください。

そして自分である程度スピードの調整ができるようになったあとは、今度はコーナーからの脱出をうまくできるようにすること。その次の段階としてコーナーの奥ギリギリまで突っ込もうとする人が多いのですが、技術的にすごく難しいです。それに怖いですし、ミスしたらアクシデントになるケースもあります。それよりはコーナーの出口でハンドルが真っ直ぐになって、「ここからはアクセルを全開にしても大丈夫!」というポイントを早く見つけてほしいです。僕のオススメは、「入口はそこそこで、脱出を上手に!」ですね。これができるようになると、安全に、タイムの向上につながっていきます。
福島県の梅宮大空さんからの質問です。「僕は、プロのレーシングドライバーを目指している高校3年生です。でも今までレンタルカートにしか乗ったことがなく、レース出場経験もありません。今年、レース参戦を目標にしようと思いますが、プロを目指すのには遅いと思いますか?」
全然遅くないと思いますよ。でも時間が限られているので、のんびりはしていられないと思います。僕の場合は、レーシングカートを経て、鈴鹿サーキットのレーシングスクールに入って、そこから本格的な勉強をしていきました。一番効率のいい方法は、やっぱりホンダやトヨタのやっているレーシングスクールに参加することだと思います。そこでスカラシップを受けることができれば、プロになる道が切り開かれていくと思います。たとえスカラシップを受けられなくても、モータースポーツはどういう世界だと身を持ってわかりますし、どうやって今後プロのドライバーとして戦っていけばいいのかというアドバイスをくれる人もいっぱいできるはずです。いろんな可能性が見えてくると思います。ただ最初にも言いましたが、スカラシップも年齢の制限があるので、のんびりはしていられないですね。

あと忘れてほしくないのは、レースはやりたいと思ってすぐにクリアできるほど甘い世界じゃないということです。いつまでにプロになるという目標を立てて、そこから逆算して、そこまでにどんな経験を積むかと具体的に考えたほうがいいと思います。
栃木県のみずきさんからの質問です。「私は小さい頃から父と兄に連れられてGTを観戦しに行っていました。初めのうちはただ連れられて行っていただけだったのですが、自分が好きなチーム(KEIHINファンです)が見つけられてからは、GTのことをもっと知りたいと思えるようになりました。今では毎年必ずもてぎのレースを見に行っています。長くなってしまいましたが、もともとはあまり興味のなかったものが他人の影響でハマってしまったことってありますか?」
もともとクルマを好きになったのも父親の影響で、今はレーシングドライバーになっています(笑)。あと道上(龍)さんに紹介してもらって、ラジコンをやりました。でも2017年、道上さんは世界ツーリングカー選手権(WTCC)に参戦するので、どれぐらい日本に帰ってくるのかわかりませんが、今年はラジコンは復活してみたいです。あとゴルフも周りにやっている人が多くて、それで始めました。
栃木県のまーさんからの質問です。「GTは二人で1台のマシンを走らせますが、塚越選手はスタートドライバーとフィニッシュドライバー、『できればこっちのほうをやりたいな』というのはありますか?」
僕は後乗りがいいですね。結果を左右するのは後乗りなので、良くても悪くても自分の責任にできます。ハラハラしながら見守っているよりは、自分でレースするほうが気楽ですね(笑)。
奈良県のたくやさんからの質問です。「スーパーGTやスーパーフォーミュラのマシンに乗っている時に、スピードの恐怖って感じるんですか?」
レーシングカーはしっかりした構造になっていますし、ダウンフォースが出ているので、真っ直ぐ走っている時はスピードの恐怖は感じません。競りあっている時も問題ないです。「怖いな」と感じるのは、やっぱり雨の時です。前が見えないのは怖いですよね。それ以外は恐怖を感じることはないです。
北海道の米内敏雄さんからの質問です。「普段はどのようなトレーニングをしているのですか?」
トレーニングの内容は内緒です(笑)。それほど特別なメニューはしていません。最近はトレーニングよりも食事の中身に気を付けています。これまでは運動していれば何を食べてもOKという感じだったのですが、身体をつくるのは食べ物ですからね。最近はオーガニック食品を中心に、摂取するメニューの栄養価なども考えながら食事をしています。
福井県の伊藤聡子さんをはじめ、たくさんの方からの質問です。「2017年の目標を教えて下さい」
スーパーGTは今年もケーヒン・リアル・レーシング(KEIHIN REAL RACING)に所属し、17号車のNSX-GTをドライブします。パートナーは前年同様に小暮さんと組むことになります。スーパーフォーミュラはリアル・レーシング(REAL RACING)で10号車をドライブすることになります。 両シリーズとも目標は常に変わらず、できるだけ早く優勝すること、それが第一歩です。その目標をクリアしないと始まらないので、そのために自分とマシンをいかに仕上げていくのかというのが大事になります。特にスーパーGTはマシンが新しくなります。開発はいろいろやらせてもらっているので、それが結果につながっていけばすごくうれしいです。2017年は内容よりも結果を重視して、全力でがんばります。

Koudai on Koudai 2016-2017 前編