Koudai on Koudai2022-2023

年に1回のスペシャル企画「Koudai on Koudai 2022-2023」に今年もたくさんの質問を送っていただき、本当にありがとうございました。後編も引き続きファンの皆さんからの質問に答えていきますが、最後には今シーズンの塚越広大の活動に関する報告もありますので、ぜひ最後までご覧ください!
取材・文=川原田剛

後編

Q愛知県の『junya_fukushima』さんからの質問です。「人生最大のラッキーだった出来事を教えてください」
運がいいなと思うのは、僕は過去に何回か大きなクラッシュをしています。それでチームの皆さんには迷惑をかけてしまいましたが、自分には大きなケガもなく、今もレースを続けることができています。それはラッキーだと思います。

ファンの皆さんはおそらく2012年のスーパーGT第5戦鈴鹿、HSVの130Rでのクラッシュが印象に残っていると思います。あの時はクルマの安全性に助けられて、も幸いに身体に大きなダメージはなかったのですが、ちょっと間違って、そのまま外側に吹っ飛んでいったら、おそらくケガをしていると思います。

一番ヤバいと思ったクラッシュは、皆さんはあまり知らないと思いますが、2016年のスーパーフォーミュラの開幕前のテストです。あのクラッシュは後で映像を見て、しびれました。雨の中で小暮(卓史)さんとからんでしまったのです。2016年は小暮さんと初めてスーパーGTで組んだ年ですが、事故の前に小暮さんと「ぶつかることなくてよかったですね」と話していたら、その矢先にぶつかってしまったんです。
Q愛知県の『junya_fukushima』さんからもう一問です。「人生最大のピンチを教えてください」
2008年にヨーロッパで戦っていたのですが、リーマンショックが発生して日本に帰国することになりました。その際、ホンダの方に国内ではシートがないと言われた時かもしれませんね。年末にリアルレーシングの金石勝智監督から電話をいただき、当時の日本最高峰のフォーミュラカーレース、フォーミュラ・ニッポンのオーディション参加の機会を与えていただき、結果的にはシートを獲得することができました。でも今振り返ってみると、あの時が最大のピンチだったと思います。
Q兵庫県の『タカヒロ』さんからの質問です。「耐久レースのハイパーカークラス(LMH及びLMDh)のメーカー(トヨタ、プジョー、フェラーリ、グリッケンハウス、ポルシェ、キャデラック、アキュラ、BMW)のマシンのうち、広大さんが乗って闘いたいメーカーはどれですか?」
どうかなあ……やっぱりフェラーリとトヨタかな。もちろん僕もホンダのドライバーなので、アキュラが世界耐久選手権(WEC)で戦ってほしいと思っています。その気持ちは横に置いておいて、フェラーリは2023年のWEC開幕戦でポールポジションを取っていますので、速さはあります。トヨタはチャンピオンマシンですし、一番完成度が高いと思いますので、この2台には乗ってみたいです。
Q兵庫県の『タカヒロ』さんからはもう一問です。「ユニバーサル・スタジオ・ジャパン(USJ)のアトラクションの中で、広大さんが気になる、あるいは乗ってみたいアトラクションはありますか?」
USJは楽しいですし、去年も子どもたちと一緒に行きました。僕は映画もアットラクションも『ジュラシックパーク』が好きなんです。小さい時に家族でジュラシックパークの映画を見に行った記憶があって、恐竜も好きですから。あとは『ミニオンズ』と『スーパーマリオ』が好きかな。
Q埼玉県の『へいたい』さんからの質問です。「塚越さんとモータースポーツの馴れ初めはなんですか?」
もともと父がクルマやモータースポーツが好きで、テレビでF1を始めとするモータースポーツ中継をよく見ていました。父は自分のクルマでサーキットに行っていましたし、その影響で僕もクルマが好きだったんです。自分でも早くクルマを運転したいという気持ちがありました。

小学校の1年生の時に、当時できたばかりのレンタルカートコース、フォーミュランド・ラー飯能(埼玉県)でキッズスクールがあるよというのを父が聞きつけて、「やってみるか?」と言われました。それで僕は「やりたい」と答えて、初めてカートに乗ることになりました。そこから僕のドライバー人生が始まりましたね。(※注 現在、塚越広大は初めてカートに乗ったフォーミュランド・ラー飯能を務めています)
Q熊本県の『アステモケイヒン』さんからの質問です。「スーパーGTに行ったときドライバーとして、ファンがしてくれたら嬉しいことはなんですか?」
もう応援してくれる気持ちだけで十分ですが、どこのウェアを着ていようが、何番目でもいいので、塚越を応援していると言ってくれるだけでうれしいです。中には本命は別のチームだけど、ドライバーは塚越を応援しているとか、栃木県出身だから応援しているよとか、そういう方もいます。でも僕のことを気に留めてくれるだけでもうれしいです。
Q岩手県の『pepper』さんからの質問です。「一番難しいと思うサーキットは? 実車でなくても構いません。シミュレーターででも構いません」
どこも難しいですが、鈴鹿ですね。ただ最近は鈴鹿が調子はいいので、富士が少し悩み中かな。
Q三重県の『ふくすけ』さんからの質問です。「実は私も無限RRと無限RZを所有しておりますが、パーツなどが廃盤になり交換できない部品などが無くなってきて困っています。同じ無限RR、無限RZオーナーの塚越選手は何かストックしているパーツや廃盤部品に対する対策などしているでしょうか?」
正直、対策はできていません。部品のストックもしていないので、そうなってしまったら困るなあと思っています。今のところは困っていることはないですが、ゆくゆくはそうなると思いますし、他のオーナーの方からも「こんなことで困っている」と聞いています。だから、僕がユーザーの声を代表してというわけではないですが、ホンダや無限の方には「作ってくださいよ」とは伝えてお願いしています。
Q岡山県の『りーくん』さんからの質問です。「好きなゲームはありますか?」
一時期は『モンスターハンター』をよくやっていたんですけど、最近はテレビゲームをずっとしていません。スマホでミニ四駆の『超速グランプリ』というのをやるぐらいですね。
Q東京都の『とじぃ』さんからの質問です。「塚越さんは今後、クルマのエネルギーは何が主流になっていくと思いますか? また、こうあって欲しい、こうなって欲しいなど、車の未来への思いもあわせてお聞きできたらうれしいです」
今は次世代のエネルギーとして電気自動車の流れが強くて、水素や最近はCO2(二酸化炭素)とH2(水素)で合成されるカーボンニュートラル燃料も注目されています。でも現時点ではハイブリッドがもっとも効率いいシステムだと思いますので、当分は続いていくのではないかと個人的には予想しています。将来的に二酸化炭素を輩出しない、ガソリンに代わる何か新しいエネルギーを使っていくことになると思いますが、それがはっきりするまではハイブリッドが主流でいくと思います。

究極的には、海水や雨水など自然にあるものをエネルギーとして使って、二酸化炭素の輩出はゼロという夢のようなエンジンが登場してほしい。いろいろ研究は進んでいますが、電気や水素を作るという時点で、エネルギーを使って環境に負荷をかけています。自然にあるものを使って走れるようになってほしいと思っています。例えば海水や雨水だけでなく、落雷で発生した電気や風車を使って貯めた電気を使って自動車を走らせるとか。本当に環境のことを考えるならば、究極はそういう結論になっていくのかなと思っています。

あるいは月や宇宙の未知なる惑星の鉱石から永久に発電できるエネルギーを発見するとか(笑)。SF的ですが、そういうのも発見されたらいいなと思います。
Q東京都の『とじぃ』さんからもう一問です。「半年前に小学生4年生の息子がレンタルカートを始めました。毎日カートに乗るのが一番いいとは思いますが、時間・予算的に週に数回が限度で、家ではシミュレーターで練習をしています。他に家で練習になるようなトレーニングなどがありましたら教えてください。
シミュレーターやグランツーリズモで練習するのはいいと思います。ただし真剣にやらなければ、あまり効果はないと思います。リアルの世界でも基本的には同じことをやるわけじゃないですか。ブレーキ、アクセル、ステアリングの操作、ライン取り、人とのバトルも。真剣にやればいいトレーニングになります。ゲームだ、シミュレーターだと思ってやると得るものは少なくなってしまうので、常にリアルを見据えてシミュレーターでトレーニングすることが大事だと思います。
Q東京都の『田中いつき』さんからの質問です。「レース中に前の車を抜かす時に考えていることを教えて欲しいです」
何を考えているのかな? まあ、相手の弱点がどこかとかは考えますが、自分が調子がいい時には「カッコよくテレビに映っているのかな?」と思ったりしますよ(笑)。たまに(金石)勝智さんが無線で「今、カッコよく映っているぞ」と言ってくれるんです。そういう時はうれしいですね。
Q熊本県の『ケーヒンタック』さんからの質問です。「最近はコロナの影響でSUPER GTの海外サーキットを走ることが無くなっているのですが、塚越選手はもし、コロナ関係なく今のAstemo NSXで海外を走れるならどのサーキットを走ってみたいですか?」
スパやホッケンハイムなど、ヨーロッパのF1を開催しているサーキットを走りたいですね。ルマンもいいですね。NASCARのマシンも走るのですから、ルマン24時間の特別枠でスーパーGTのマシンで走れないかなあって思っています。

本当にスーパーGTとドイツ・ツーリングカー選手権(DTM)とのコラボがなくなってしまったのは残念です。ホッケンハイムに行けるという期待感もあったんですけどね。スーパーGTに限らず、スーパーフォーミュラもヨーロッパのサーキットで走ってほしいと思います。
Q神奈川県の『ムラ』さんからの質問です。「モータースポーツ以外で好きなスポーツ(もしくは興味があるスポーツでも)はありますか?」
僕の中ではすごく申し訳ないんですが、「レースを見に来てください、サーキットで応援してください」と常々言っているのですが、他のスポーツをまったく見ないんです。野球のWBCもサッカーのワールドカップも全然見ませんでした。レースに興味がない人は、多分、僕と一緒なんだろうなと思っています。

あと僕はスポーツを観戦するよりも、自分でできる競技はやりたくなってしまうんです。もちろんプロの選手とはレベルは違うのですが、例えばスノボーやスキーも観戦するよりは、やりたい派なんです。
Q栃木県の『いけ』さんからの質問です。「愛車の中でどのエンジンが一番好きですか?」
これは難しいですね。まあ、CIVIC MUGEN RRに搭載されているK20はすごくよく走るなあと感じます。すごく軽くふけあがるし、気持ちいいなと思います。
Q神奈川県の『ろすた』さんからの質問です。「YouTubeでコラボしてみたいドライバーはいますか?」
小暮さんには『塚越広大MOTOR HOLIC 881』のチャンネル登録者が2000人になったら強制的な出てもらおうと思っています。楽しめて、和気あいあいできるのであれば、誰かとやってみたいですが、この人とやりたいというのは正直ないですね。YouTubeでは土屋(圭市)さんと(鈴木)亜久里さんとNSXに関する番組に出演したのですが、すごく緊張しました(笑)。でも、すごく面白かったです。
Q静岡県の『カツリョウ』さんからの質問です。「今までに乗ったマシンで一番運転しやすかったマシンは何ですか?」
スーパーGTやスーパーフォーミュラのマシンは乗りやすいのですが、一番はマクラーレン・ホンダのF1マシンです。デモランでしたが、MP4/4、MP4/5、MP4/6の3台を乗りました。どれも本当に乗りやすかったです。

MP4/4はエンジンがターボで下があまりなくて、回転数が上がってからパワーが出るという感じで、エンジンには多少クセがありましたが、めちゃくちゃ乗りやすかったです。MP4/5とMP4/6は自然吸気で、MP4/5はV10、MP4/6にはV12エンジンがそれぞれ搭載されていました。エンジンの音は違いますが、フィーリングにそれほど大きな違いはなかったです。でもF1マシンはすごく速かったですし、扱いやすかったですね。
Q静岡県の『カツリョウ』さんからはもう一問です。「今後、新たな愛車を購入する予定はありますか?」
僕は今まで基本的に、「これで最後だ」と思って、毎回、愛車を購入しています。前編でも話しましたが一台に集約できるんだったら、それにしたいと思っていますので、そういうクルマに出会いたいなあと思っています。今、興味あるのはキャンピングカーかな。あとはホンダがCR-Vの燃料電池車「CR-V FCEV」を日本に導入するというニュースを見ましたので、それに乗ってみたいです。
Qファンの皆さんからの質問は以上です。今回もたくさんの応募をありがとうございます。プレゼントの当選者にはあらためてこちらからご連絡しますので、しばらくお待ちください。では最後に2023年シーズンの活動と抱負をお願いします。
2023年はスーパーGTに加え、スーパーフォーミュラでスリーボンドレーシングのアドバイザーとしてチームに加入することになりました。今年のスーパーフォーミュラはSF23という新しいマシンになって、事前の公式テストが1回だけで本番を迎えることになります。全チームが本当に大変な状況の中で開幕の富士(4月8日~9日)を迎えます。スリーボンドレーシングは1台体制での参戦になりますが、結果を残したいという思いがすごくあります。

アドバイザーは基本的にクルマの状況であったり、ドライバーが何を求めているのか、次は何をしたいのか、ということをチームに伝えることが役割となります。僕の中では道しるべのようなものだと考えています。チームの判断に対して、ドライバーとしてこうしたらいいんじゃないかと伝えて、(福住)仁嶺選手の分身のような形でチームにいられることがベストだと思っています。あとはチームが見切れない周りの状況を把握して、チームが少しでも安心して戦えるように力添えしたいですね。正直、自分が乗るよりもプレッシャーがかかっていますが、しっかりと結果を残したいと思っています。

スーパーGTに関しては今シーズンも2022年度と同じ体制で臨みます。目標はシリーズチャンピオン獲得。それしか考えていません。ここ数年は最終戦までタイトルを争える状況で戦えていますが、タイトルを手にすることができていません。今年こそ結果を残さなければならないし、いつまでも「取れそうなのに取れない」という状況で終わるわけにはいきませんので、タイトルにこだわって戦っていきます。

スーパーGTの今のマシン規格では今年が最後のシーズンになります。開幕前のテストでは各陣営のマシンが煮詰まっていると感じました。どこが有利かというのは見えていませんが、タイム差がほとんどなく、すごく接戦になっていくと予想しています。そういう状況の中では、タイヤの選択やいかにレースウィークにセットアップで合わせこみをしていくのかが勝敗を分けるポイントになっていくと思います。タイヤに関しては今年、持ち込めるタイヤが1セット減っています。どのタイヤにするかという選択、予測する力が求められますので、チームとして総合力がより大事になっていくと思います。

あと今年はレーシングカートのフィールドでも新しい活動を始めます。今年から『AUTOBACS GPR KARTING SERIES』という新しいシリーズが始まります。2021年、22年と縁があって、全日本カート選手権の副競技長をやらせていただきました。今年はGPRのレースディレクターとして全戦帯同することになりました。僕は全日本カート選手権のFSAクラスに参戦していた時、最後のシーズンに松浦佑亮さん(レーシングドライバーの松浦孝亮選手の兄)のチームに所属してタイトルを獲得し、四輪のレースにステップアップすることができました。

佑亮さんの新しいプロジェクトに賛同したということがありますし、レンタルカートコースのフォーミュランド・ラー飯能のオーナーをしていますので、モータースポーツを底辺で支えるカートをもっと盛り上げていきたいですし、多くの人にとって魅力があって、楽しめる競技にしていきたいと思っています。

レーシングカートもF1と同様に競技長がいます。白黒がはっきりするような事故やアクシデントに関しては、競技長が判断しますが、ドライバー同士のバトルの中でなかなか判断が難しい状況が出てきます。そういった時にレースディレクターが年間を通して同じ物差しでジャッジすることが僕の役割となります。レーシングカートに関しては、ラー飯能でも引き続きいくつのレースに参戦していきたいと思っています。

昨年から本格的に活動を始めたYouTubeの『塚越広大MOTOR HOLIC 881』のチャンネルもたくさんの方が見ていただいて、少しずつ広がっているという実感があります。僕の中では自動車という文化をすごく大事にしていきたいという思いがあります。モータースポーツとクルマという、自分の大好きな世界をもっと広めて、深めていきたいなという気持ちがあります。ラジコンやミニ四駆などのホビーを含めて、広い意味でのモータースポーツだと捉えて、みんなで楽しみながら盛り上げていけたらいいなと思っていますので、いろんなところに参加していきたいと思っています。

最後にまもなくモータースポーツのシーズンが本格的に始まりますが、今年も引き続き応援をよろしくお願いします!