Koudai on Koudai 2021-2022

年に1回のスペシャル企画「Koudai on Koudai 2021-2022」にたくさんの質問を送っていただき、本当にありがとうございました。今回もレースに関するディープな質問から、ゲームやアニメ、クルマなどの趣味に関するもので、さまざまな内容が届きました。最も多かったのはスーパーGTで今季から新たにパートナーを組む松下信治選手に関する質問ですが、それらを含めて、さっそく塚越広大に答えていただきます!

取材・文=川原田剛/写真=REAL RACING、村上庄吾/衣装協力=PUMA、SAMURAI JEANS

前編

Q兵庫県の「タカヒロプライム」さんからの質問です。「今年から日産のGT500車両がZに変わりましたが、以前のGT-Rよりは手強いと思いますか?」
1月に鈴鹿でテストをした時にZが一緒に走っていましたが、かなり速かったですね。強敵になるなと感じました。でも合同テストでは各チームがどんなプログラムをしているのがわからないので、本当の実力は開幕するまで見えません。でも今シーズンは3メーカーのマシンは昨年よりも拮抗し、接戦になると予想しています。
Q兵庫県の「タカヒロプライム」さんからもう一問です。「塚越家が家族旅行で行くとするなら、東京ディズニーリゾートとユニバーサル・スタジオ・ジャパン、どっちに行きたいですか?」
なかなか難しいですね(笑)。子どもたちはディズニーランドの方が好きだと思いますが、僕個人としてはユニバーサル・スタジオに行き、『進撃の巨人』やマリオの『スーパー・ニンテンドー・ワールド』のアトラクションを楽しみたいです。それに僕自身、大阪に行きたいです。大阪には友だちや、応援してくれる人がたくさんいます。でもコロナを機に大阪に行く機会が全然なくなってしまい、寂しいですね。今年は久しぶりに大阪に行きたいですね。
Q千葉県の「ハルミ12」さんからの質問です。「スーパーフォーミュラではF1のようにレース中の無線が公開されるようになるようですが、塚越さんは無線でチームとどんなコミュニケーションをとっていますか? かなり喋るタイプですか?」
僕は喋らないほうですね。強気な発言はいいのですが、弱気な発言をすると、そっちに引っ張られる感じがしてイヤなので、あまり喋りたくないんです。例えばエンジンの調子が悪そうだとか、もちろん本当に悪ければ情報としてチームに伝えます。でも何かが壊れそうとか、タイヤが厳しいとか、情報としては伝えますが、自分の気持ちとしてあんまり言葉にしたくありません。だから基本的に周囲の状況やタイムを報告するという感じですね。
Q同じく千葉県の「ハルミ12」さんからの質問です。「昨シーズン限りで(中嶋)一貴選手がドライバーを引退しましたが、塚越選手はスーパーフォーミュラで中嶋選手とタイトルを争ったこともあります。メーカーが違い、ライバルですが、どんな先輩でしたか?」
いつもモータースポーツに対してフラットな向き合い、ドライバーみんなと仲がよいと思います。F1の経験もあり、インテリジェンスで、モータースポーツの発展に尽力されています。でも、あくまで僕の印象ですが、自動車を自分の好みに改造したり、カスタムして楽しんだりすることには興味がなさそうな気がします。本当のことはわかりませんが、ドライバーとしては尊敬する先輩であることは確かです。
Q東京都の「りっちゃん」さんからの質問です。「昨シーズンのF1でのマックス・フェルタッペンとルイス・ハミルトンのチャンピオン争いをどう見ましたか? どっちを応援していましたか?」
もちろんホンダのドライバーとしてフェルスタッペンを応援していました。でも最終戦のアブダビGPは判断の難しいレースでしたよね。でも僕は、最終的に流れを引き寄せるドライバーやチームがすごいと思っています。あのレースは終盤にウイリアムズのニコラス・ラティフィがクラッシュし、セイフティカーがコースインしなければ、ハミルトンが優勝し、普通にチャンピオンを取っていました。でも流れを変えるだけの何かがフェルスタッペンにあったということだと思います。

その後のセイフティカーの手順は世界中で大きな議論がありました。レースディレクターの判断が正しいのかどうかはわかりませんが、どう言おうと、最終的に流れをつかんだフェルスタッペンとレッドブル・ホンダの勝ちだと思います。僕が優勝した昨年のスーパーGT第2戦の富士でも本当にいろんなことがありました。正直、僕たちのマシンは富士を制するだけのポテンシャルはなかったと思います。でも最初のフルコースイエロー(FCY)のタイミングでうまくピットに入り、大きなチャンスをつかみ、他のマシンのトラブルやペナルティもあり、流れを引き寄せて勝つことができました。僕たちも普通にレースが展開していたら、きっと勝てなかったと思いますが、あれもレースですよね。スポーツは筋書きのないドラマだと言われますが、本当にそうだなとあらためて感じた2021年でした。
Q東京都の「りっちゃん」さんからもう一問です。「塚越選手は古いものを含めて、乗ってみたいホンダのレーシングカーは何ですか?」
スーパーGTの2009年のNSXです。あのマシンに搭載されたエンジン音はHSVとも違うのですが、シーケンシャルシフトの最後の年で、コクピットでは機械音がいっぱいしていました。現在のNSX-GTと比べると乗りづらくて、少し気を抜くとどこかに飛んでいってしまうようなクルマだったのですが、初代NSXの究極形だったと思います。また乗ってみたいですね。
Q埼玉県の「トモヤ」さんを始め、たくさんの方からの質問です。「スーパーGTでパートナーが松下選手に変わりますが、期待していることは? また松下選手の印象は?」
松下選手は以前(2014年)にリアルで全日本F3を戦っていたことがあります。その時に僕はスーパーフォーミュラに参戦していて、隣のピットにいました。その当時はそれほど交流があったわけではないですが、2014年の暮れにアブダビで開催されたGP2合同テストに一緒に行ったことがあります。その時が一番濃い時間だったかな。その時にイギリスの世界遺産ストーンヘンジを見に行ったりもしましたね。

スーパーGTではこれまで何回かテストをしていますが、日本でずっと戦っていたドライバーとは違う印象ですね。海外で一人で戦ってきたので、ドライバーの立ち位置の作り方がうまいですし、勝つためには自分はこうしたいと周りを巻き込んでいく力も強いと感じました。これまで組んでいたベルトラン・バゲットも自分の意見を主張するドライバーですが、似ている部分はあります。

松下選手はGT参戦2年目ですが、去年のニッサンとの違いなどをいろいろ聞き、彼の提案も取り入れています。僕は勝つためだったら、いい提案は取り入れるべきだと思っています。僕はずっとリアルで戦っていて、チームやスタッフのこともよく知っています。松下選手もF3時代はリアルにいましたので、全員、知らないわけではありません。そういう意味では彼もチームに溶け込み、お互いにレースに集中できる環境ができていると思います。あとはお互いにいい走りをして、結果を残すだけだと思っています。
Q兵庫県の「ヒロトン」さんからの質問です。「Hondaでは経験豊富なベテランドライバーの域に達していると思いますが、若いドライバーとは、どんなコミュニケーションをされていますか?」
特別なコミュニケーションはしていません。積極的でもなく消極的でもなく、自然に接しています。鈴鹿サーキットレーシングスクール(SRS)で講師を務める時に、若い大湯(都史樹)選手や笹原(右京)選手とも話しますが、プライベートの話題よりも、どうしてもレースのことが多くなってしまいますね。
Q三重県の「scp10user」さんからの質問です。「鈴鹿のJFLサッカーチーム、鈴鹿ポイントゲッターズに“キングカズ”こと三浦知良選手の移籍加入が決まりました。世間的な固定観念である、プロ選手の年齢という壁に挑戦するかのような取り組み姿勢は、単純にカッコいいです。星野一義さんや本山哲さんに通ずる哲学や美学のようなものも感じます。ぜひ塚越選手にも生涯現役で活躍して欲しいですが、ご自身ではどのように考えていますか?」
僕自身はクルマを運転することが好きなので、星野さんや本山さんのように長くレーシングドライバーとして続けたい気持ちがありますが、「自分がちゃんと実力で勝てるところに居続けられれば」という条件付きです。ただ走るために続けるというのは自分の中では考えていません。勝てない場合は潔く身を引きたいと思っています。 自分の力が衰え、いずれ勝てなくなる日が来ることを考えるのは怖いことです。自分が自分でなくなってしまうということですからね。それでも割り切って続けられる人もいるでしょうが、きちんと辞め時を見極められる人はすごいなあと思います。レースに限らず、終わりのタイミングを決められるスポーツ選手は少ないですし、一貴さんのようにきちんと引退セレモニーができる人は限られています。いつの間にか消えているというケースがほとんどです。僕はそうならないようにしたい。まだ引退については深く考えたことはありませんが、ちゃんと今シーズン限りで引退すると宣言して終わりたいと思っています。
Q三重県の「scp10user」さんからもう一問です。「昨シーズンの最終戦、GT300の佐藤蓮選手とGT500の山本尚貴選手が接触しましたが、双方がそれぞれにチャンピオン懸けて必死に戦う中での交錯に見えました。若い佐藤選手には過酷な試練だなと素人目に映りました。才能ある選手だと思うので、この試練を乗り越えて欲しいですが、なぜかホンダ同士の接触に関係する事が多いのでしょうか。17号車のエースとして、塚越選手のお考えを知りたいです」
僕自身もホンダ同士で接触し、厳しく叱責されたことがあります。もちろんホンダ同士の接触は絶対にやってはいけないことですが、それ以外はフェアにレースをするというのがホンダのポリシーです。接触が多いというのは、その裏返しで、フェアに勝負をしていることのあらわれだと思います。ポイントのことだけを考えれば、大人しくレースをしてほしいという場面が過去にいっぱいあったと思います。でもホンダ陣営は、レースをさせることにも重きを置いてきたので、接触してしまったというケースが何度かありましたが、それもホンダの魅力だと考えています。
Q滋賀県の「ピンクのパンダ」さんからの質問です。「塚越広大号というクルマをプレゼントするとしたら、どんなコンセプトの車で、車種、色はどんな感じにしますか?」
なかなか難しいですね。プレゼントする相手によりますが、旧車もいいんですけどね。でも旧車は買うのは簡単ですが、維持するのが相当難しいですから。一瞬いいなあと思って購入して、地獄を見ている人が僕の周りにはたくさんいます(笑)。だから僕は普段使いができて、かつ趣味に使えるオールマイティなクルマがいいと思います。イチオシは電気自動車のホンダEですね。カラーリングはワインレッド。Astemoカラーに近い赤ですね。ワインレッドはあまり目立たないし、街中にうまく溶け込みます。それを塚越広大号としてプレゼントしたいです。
Q兵庫県の「フクダ」さんからの質問です。「僕は去年念願のS2000を購入しました。現物は写真で見るよりもかっこよく、毎日運転するのが楽しいです。塚越選手もS2000を所有されていたとのことですが、どんな思い出がありますか?」
まずはS2000購入、おめでとうございます! 僕が持っていたS2000は、1999年の一番最初のモデルです。僕はS2000を買ってすぐにパンクしたんですよね。それはよく覚えています。あと一回、SUGOを走ったことがあります。F3の時だったのですが、それまでSUGOのコースを走ったことがなかったので、伊沢(拓也)さんと一緒に練習がてら、走りに行きました。その後、ヨーロッパ(ユーロF3)で戦うことになり、S2000を日本に置いて渡英しました。しばらくしてから弟から、「S2000を売ってビートになりました!」と連絡がきました(笑)。だからちゃんとお別れをしないで別れてしまいました。それが僕のS2000との思い出です。
Q兵庫県の「フクダ」さんからもう一問です。「僕は岡山国際サーキットでレースを観戦することが多いのですが、去年からスーパーフォーミュラのレースが岡山で開催されず寂しいです。選手の方もレースをするサーキットが減るのは寂しいですか?」
そうですね。ただでさえ国内で全日本選手権のレースが開催できるサーキットは少ないですし、さらに開催サーキットが減るのはドライバーの僕たちも寂しいです。ファンの皆さんが岡山を楽しみにしているのと同様に、僕らもいろんなサーキットを走るのが楽しみなんです。そういう意味では、国内だけでなく海外でもレースがあったほうがいいですね。あと僕は市街地コースでレースをやってほしいと思っています。日本が街中でレースができる国になってほしいです
Q市街地コースに関する質問が千葉県の「yoshi」さんから届いています。「市街地コースが好きと以前お話されていましたが、自由に国内のどこでもコースを作れるとしたら、どの街にどんなコースを作りたいですか?」
海沿いがいいですね。よく日本のモナコとか言われる熱海、東京のお台場、横浜のみなとみらいなどが面白そうですし、海外のファンにとっても魅力があると思います。あとはこれまでレースを開催したことのないところ、例えば北海道や沖縄などでもレースをしたいですね。飛行場の滑走路でもいいと思いますし、美しい風景のところで走りたいですね。
Q栃木県の「ベルトラン・バケットさんと誕生日が同じ人」さんからの質問です。「一番走行しやすいサーキットはどこですか?」
走行しやすさだけで言えば、富士スピードウェイかな。コースが広いし、路面もきれいです。もてぎもフラットで走りやすいですが、鈴鹿は自分のタイヤが冷えている時に後ろから速いマシンがガンガン来た時に、「もう、ごめんなさい」という感じで避けないと譲れません。特にS字とかは難しいです。路面に関しては鈴鹿がピカイチなんですが、走りやすさで言えば、富士になりますね。
Q栃木県の「ベルトラン・バケットさんと誕生日が同じ人」さんからもう一問です。「塚越さんの地元について一言お願いします!」
ここは『とちぎ未来大使』として言わせてもらいますね(笑)。栃木にはまだまだいいところがいっぱい眠っています。こないだも友人と道の駅ツアーをしたのですが、栃木は広いですから、意外と初めての場所がたくさんありました。メジャーな日光東照宮や日光杉並木街道はもちろんいいですが、湯西川や奥日光もすごくいいところなんです。ぜひ一度、足を運んでほしいですね。

テーマパークだと『足利フラワーパーク』に『ツインリンクもてぎ』。もてぎは、この3月から『モビリティリゾートもてぎ』に名称を変更していますが、最近、アウトドアに力を入れて、すごく注目されています。那須も自然豊かで、昔から人気のスポットです。食事もおいしいですし、海がない以外、なんでもありますよ(笑)。

栃木の人は海を見ただけで、「うわあー」となんかテンションが上がってしまうんです。電車やクルマで海沿いを走るだけで、なんか興奮します。あと栃木はお米がすごくおいしいです。毎月「5(ご)」と「8(はん)」のつく日を「栃木県民ごはんの日」と定めているのですが、ブランド米の『とちぎの星』がすごくおいしいですよ。ぜひ一度、食べてみてください!