Koudai on Koudai
2020-2021

今回も塚越広大への質問にたくさんの応募をいただき、心から感謝を申し上げます。今回は質問とともに、塚越広大が2020年シーズンにスーパーGT参戦100戦を迎えたこともあり、塚越広大との思い出の写真もお送りいただきましたので、そちらもあわせて紹介いたします。では、さっそく塚越広大に答えていただきます!

 

前編

Q兵庫県のヒロトンさんからの質問です。「久しぶりに車を買い換える予定で探していているのですが、広大さんが車を購入する場合、何を優先して車を選びますか?」
最近だと自分が乗っていて楽しいことや、僕はカスタムが好きなので、少しずつでも自分好みにパーツを変えられる車になりますね。あと僕はホンダ車が好きなので、それを探している気がしますね。

最近、初代NSXを購入して乗っています。自分がスーパーGTにデビューした時に乗ったマシンでもありますし、ホンダを代表するスポーツカーなので、いつかは所有したいと思っていました。いろんなご縁もあって、この車にたどり着きました。それに初代NSXは、最初に言ったようにパーツを変えられる部分も多いですし、選択肢も多いので選びました。
Q兵庫県のヒロトンさんからはもう一問です。「スーパーGTでは、長年リアルレーシングに在籍されていますが、他のチームにはない強みはどこでしょうか?」
僕がスーパーGTにリアルレーシングからデビューしてから、昨年で100戦目を迎えました。それほど長い間、リアルレーシングで走っています。この100戦の間にさまざまなドライバーの方々とコンビを組ませていただき、いろいろと勉強しました。さらに監督の(金石)勝智さんと一緒にいますので、お互いの考えていることや戦略に関して信頼しあっています。それが僕たちの強みだと思います。
Qヒロトンさんの思い出は「広大さんとの思い出はサーキットやイベントで丁寧に対応いただけるにファンサービスです。広大さんはいつも笑顔でサインや気さくに会話や写真に応じていただけるので、遠い存在であるはずのGTドライバーですが、広大さんには身近に感じられて親近感が湧き、ますます応援したくなります」とのことです。
ありがとうございます。写真で送ってくれた09年のNSXはすごくレアで、出回っていても結構いい値段するらしいですよ(笑)。これからも応援をお願いします!
Q兵庫県のフクダさんからの質問です。「2019年の大阪オートメッセで無限の武藤(英紀)選手が『リアルレーシングの暖気ってうるさいの』と仰ってましたが、塚越選手はどう思いますか? 他のチームより音が大きいなと感じますか?」
確かにリアルのチーフメカニックの鈴木(豊久)さんが結構、気合入った暖気をするんです(笑)。鈴木さんは、ただ単に暖気をするだけでなく、なるべく高い回転まで回して、レーシング領域でのエンジンやマシンの具合を見ようとしているんだと思います。暖気+マシンのチェックも兼ねているので、結構、激しく暖気をしていると思います。それだけチームもメカニックも気合が入っている証明だと思いますね(笑)。暖気は基本的には水温や油温をあげるのが目的なのですが、人によっての個性が出ると思います。
Qフクダさんの思い出は「2018年の開幕戦です。人生で初めて観に行ったレースでリアルレーシングが優勝したのは今でも鮮明に覚えています。ピットウォークでもサインを頂いてとてもうれしかったです。その後もたびたびサインを頂いています。ありがとうございます」とのことでした。
このレースは小暮さんと組んでいた時に、岡山で開催された開幕戦です。レース中にフロントグリルに他車のパーツが突き刺さり、ツノの生えた時ですよね(笑)。印象深いレースですね。
Q静岡県のいのさんからの質問です。「スーパーGTで、車種、タイヤ、監督、パートナーなど全部好きなように選べるとしたら、どんな組み合わせにしたいですか?(引退した人など、有り得ない組み合わせでもOKです。)選んだ理由も教えて下さい」
なかなか難しいし、答えづらいですね(笑)。でも過去にスーパーGTで一緒に組んだドライバーの先輩方、(金石)年弘さん、武藤(英紀)さん、小暮(卓史)さんとみんなで一緒にレースをしてみたいと思います。GTじゃなくてもいいので、スーパー耐久のような長い距離のレースを、みんなでワイワイガヤガヤ言いながらやってみたいです。監督はF3時代にお世話になった田中弘さんがやってくれたらうれしいです。でも弘さんが監督だったら、ワイワイガヤガヤじゃなく、真剣にやらないダメですね(笑)。
Q静岡県のいのさんからもう一問です。「レース前にプライベートで悲しいことやつらいことがあった時、どうやって気持ちを切り替え、どのように乗り越えていますか?(私は家族の死からいまだに立ち直れません)」
これも難しい質問ですが、僕の場合、レースの時は何があっても気持ちを切り替えて走ることに集中しなければならなりません。そんな時は、自分が今、こうして大好きなレースができているのは過去に積み重ねてきたことや、出会ってきた人たちのおかげだと考えるようにしています。そういう事実にあらためて向き合って感謝の気持ちを持つことで、気持ちを切り替えることができます。

僕自身、これまでのレースではつらいことや悲しいことがいろいろありましたが、それら全部をひっくるめて今があります。もちろん、あの時の結果が違っていたら、こうすればよかったと考えることもありますが、もう過去には戻れません。前に進んでいくしかありません。過去の出来事に感謝して、これから先もっとたくさんの感謝ができるように精一杯やると考えることが一番いいと思います。僕はそういうふうに考え、気持ちを切り替えているというか、受け止めています。僕の経験が、参考になってくれればうれしいです。
Qいのさんの思い出は「私はクラシックバレエをやっているのですが、舞台でいつも緊張してしまい、思うように踊れないことが多いです。塚越選手の力強い走りを見習って、アグレッシブかつ、のびのびと踊れるように、トウシューズにサインをお願いしたところ、『下から支えますね』と言って下さいました。シューズはもうボロボロでサインも薄くなってしまいましたが、今でもお守りにして大切にしています」
いのさんのトウシューズにサインしたのはよく覚えています。トウシューズにサインしたのは初めてですし、そんな機会はめったにないじゃないですか(笑)。きっともう二度とトウシューズにサインすることはないと思います。今もお守りとして大事に使ってくれているということですが、うれしいですね。こからもクラシックバレエを頑張ってほしいですね。
Q東京都のつっちーLA(エルエイ)さんからの質問です。「スーパーフォーミュラでタチアナ・カルデロン選手が、広大選手がマシンを随分速くしてくれて感謝していると言っていましたが、スーパーフォーミュラに限らずドライバーによるセッティングの変更要望というのは具体的にどういう内容なのでしょうか?」
タチアナ選手がこんなコメントをしていたとは知らなかったので、まずはうれしいですね。2020年シーズンはタチアナ選手が出場できなかった2戦に参戦しましたが、細かいことは置いておいて、基本的には自分が攻めやすい、思い切り走れるようにセットして、方向性を探っていきました。今回に関しては、基本的にはエンジニアの伊与木(仁)さんが「広大が乗るんだったら試したいことがいくつかある」と言われて、それを中心にやっていきました。

クルマをセットアップしていく手順は、いろんなケースがあります。僕自身が「ここを触ったほうがいいのかな」と感じたことをエンジニアに伝えていくケースもあります。エンジニアが変更したいポイントと、僕が感じたことが間違っていなければ、それで基本的に進めていきます。エンジニアの指摘が間違っていると感じた場合は、「それはこうだと思います」と意見を言う時もありますが、状況次第ですね。とにかく今のレーシングカーは1ミリ動かしただけで、全然違うクルマになってしまいます。かなり繊細なクルマになってきているので、非常にセッティングは難しくなっています。
Q千葉県のまさゼットさんからの質問です。「普段、スーパーGT車両をドライビングしていますが、家族で出かけられる際に運転される場合、どんな事に注意して運転をしていますか?」
当然ですが、安全運転が最優先です。なおかつ最短で目的地に着くことです。そう考えると、レースと一緒かもしれないですね。無事故無違反で早く目的地に着くことが大事ですから(笑)。例えばレースではピットに入るタイミングが大事じゃないですか。普段の運転でも、いつサービスエリアに入るのか、無駄なピットインをしないように先にトイレを済ましておくとか、事前にしっかりと作戦を組み立てておく(笑)。そういうのが大事だと思います。
Q千葉県のまさゼットさんからもう一問です。「今後、スーパーGT車両で、機会があれば乗ってみたいメーカーはありますか?」
GT500クラスに関しては、やっぱり現在走っている車両、スープラとGT-Rのどっちにも乗ってみたいですね。現在のGT500クラスのマシンはレギュレーション的には各メーカーが共通したパーツを使っている部分が多いですが、エンジンや車体の作りはメーカーによって全然違うと思います。どんな特徴のマシンなのか、ぜひドライブしてみたいです。GT300のFIA GT3規格のマシンには一回も乗ったことがないので、乗ってみたいです。まずはNSXのGT3には乗ってみたいですね。
Q宮城県の鈴木成那さんからの質問です。「過去にも質問させてもらったものです。現在社会人になりましたが、それでもGTのドライバーになりたいです。ハンドルコントローラーやバケットシートなどがついているシミュレーター風なものはあるのですが、実際のレース経験(カート等)はありません。努力次第ではそこからレーサーになることは可能でしょうか? この5年が勝負だと思っているので、ぜひご意見お聞かせ願います!」
なれるかなれないかと言えば、なれる可能性は十分にあると思います。もちろん、すごく大変だと思いますが、シミュレーターは最近、実車にどんどん近づいてきていますので、それに乗って練習を続けるのはひとつの手だと思います。ただGTのドライバーが目標ということであれば、フォーミュラの経験はすごく役立つと思います。スーパーFJやF4などのミドルカテゴリーのマシンに乗ることで、世界が大きく変わると思います。

スーパーFJはそれほど多くない予算で乗ることができると思いますし、宮城県ですとスポーツランドSUGOという素晴らしいサーキットがあります。スーパーFJで頑張って練習することをオススメします。あとチームのドライバーオーディションが結構あると思いますので、それに参加してもいいかもしれません。

レーシングカートの経験はあったほうがいいと思いますが、プロのドライバーになるための絶対条件ではありません。カートにはサスペンションがついていませんし、マシンの大きさやブレーキなども4輪とは違います。それにカートで速かったドライバーが必ずしも上のクラスにステップアップできるわけではありません。カートの経験がほとんどなくてもステップアップしている選手はいますので、ぜひ頑張ってほしいと思います。
Q栃木県のまーさんからの質問です。「家族と過ごしていても、ついレースのことを考えてしまうことはありますか?」
ありますね。むしろレースのことを考えない時はないです。ふとした瞬間に、あの時のセッティングはこうしたほうがよかったのかな、このラインをとればよかったのかなとか、ついつい考えてしまいます。
Q栃木県のまーさんからもう一問です。「レーシングドライバーを夢見て、ラー飯能にも通っていた息子がその夢をあきらめ、カートをやめてしまいました。塚越選手はレーシングドライバーを目指す過程で夢をあきらめそうになったことはありましたか?」
僕はなかったです。でも大変な時もいっぱいありました。それでも自分がレースやクルマが好きなので、それに関わっていない自分を想像できませんでした。もちろん思い通りに行かなくて、これまで悔しい思いをいっぱいしていますが、自分がその場にいないと可能性が消えてしまうと思って、夢を追いかけてきました。

息子さんはいったんカートをやめてしまったと書いてあります。でも最初にも言いましたが、子どもの頃にカートをやっていないとレーサーになれないというわけではありません。F1を目指しているのなら、年齢が若くないと難しいですが、スーパーGTでは50歳をこえた大ベテランの方が活躍しています。レーシングドライバーになるということではチャンスはあると思います
Qまーさんの思い出は「菅生でのGT初優勝は今でも忘れられません!GT史上に残る僅差での優勝は見ていて大興奮でした!」
菅生での初優勝は2010年のスーパーGT第5戦スポーツランドSUGOです。もう10年以上も経ちましたが、後にも先にもあそこまでの僅差(0.025秒差)で勝った負けたというレースはないと思います。インディカーに行けばあるかもしれませんが。スポーツ、レースというのは本当に最後まで何が起こるかわからない。その醍醐味が凝縮されたレースだったと思います。