Koudai on Koudai 2021-2022

年に1回のスペシャル企画「Koudai on Koudai 2021-2022」に今回もたくさんの質問を送っていただき、本当にありがとうございました。後編ではレースからプライベートに関する質問まで、幅広く答えていますが、最後には今シーズンのスーパーフォーミュラの活動に関する発表もあります。ぜひ最後までご覧ください!

取材・文=川原田剛/写真=村上庄吾/衣装協力=PUMA、SAMURAI JEANS

後編

Q後半戦のスタートです。静岡県の「いの」さんからの質問です。「レーシングドライバー以外で興味のある職種はありますか? 1日だけ体験できるとしたら、やってみたい仕事は何ですか?」。大人専用のガチなキッザニアみたいな施設があったら何を体験したいか、みたいなイメージとのことです。
前にある取材で答えたことがあるのですが、レーシングドライバー以外だったら宇宙飛行士になりたかったんです。理由はシンプルに宇宙に行ってみたいから。漫画の『宇宙兄弟』を見ながら、いいなあって思っています。
Q静岡県の「いの」さんからもう一問です。「オフシーズンや、プライベートでもついやってしまうレースの癖や習慣はありますか? 逆に、レース以外の場ではやらないように気をつけていることなどはありますか?」
僕の場合は、(金石)勝智さんから「普段の生活でできないことはレースでもできない。普段からレースのことを踏まえて生活しなさい」と言われています。だから、例えばごはんを食べる時でも段取りをきちんとするとか、道を歩く時でも最短ルートを通って歩くようにするとか、そういう小さいことでもレースに役立つと思いながら生活しています。あと思わず出てしまうクセといえば、例えば漫画やアニメとかでクルマが出てくるじゃないですか。何も考えないと「ああ、クルマが出ているなあ」と思うんでしょうけど、「あ、シビックだ、これはNSXだ」とか車種まで考えてしまうことですね(笑)。
Q大阪府の「おいも」さんからの質問です。「GTマシンはレースカーなので、市販車に比べてアクセルを踏んだ時の反応は早いと聞いているのですが、市販のバイクホンダで言えばCBR1000RR-Rのアクセルを開けた時の反応とどちらが早いのでしょうか?」
僕もオートバイに乗りますが、オートバイの反応や加速はかなり早いです。しかもCBR1000RR-Rだと、スーパーGTやスーパーフォーミュラに負けていないと思います。
Q大阪府の「おいも」さんからもう一問です。「テレビのレース中継やパンフレットで選手紹介が必ずされますが、その時の写真は誰がどういうふうに選ぶのでしょうか? 昨年の塚越選手と山本選手の写真を見るたびに、他にいいのがなかったのかと気になりました」
この2年間はコロナの影響もあって、ちゃんと写真を撮れていないんです。逆にレッドブルとかはメッチャ、カッコよく撮っています。そのギャップがあるんです。でもコロナが終われば、もうちょっとまともになると思います(笑)。
Q岡山県の「なみなみ」さんからの質問です。「愛車を運転される時は、音楽派ですか? ラジオ派ですか? それともエンジン音を楽しむ派でしょうか?」
若い時は洋楽やユーロビートなど、ガンガン音楽をかけていたのですが、最近は無音か、ラジオですね。音楽はあまりかけないです。ただ、ぼうっと運転している感じです。そもそも(今回の撮影で使用した)NSXはオーディオレスですから。ラジオもないです。完全にエンジン音を楽しんでいます。
Q大阪府の「つばさ」さんからの質問です。「レースウィーク中の自分流のルーティンや験担ぎはありますか?」
レースの前に家と自分の部屋をなるべくきれいにしてから出かけることが唯一のルーティンです。それ以外はあまりルーティンを作らないようにしています。ルーティンができなかった時に慌てるのが嫌なので。
Q大阪府の「つばさ」さんからもう一問です。「走行中コースサイド(観客席)は見えたりしますか?」
見えますよ。でもバトル中や全開走行している時はさすがに見えないというか、見てないです。でもレースが終わってゴールした後は、観客席で旗や手を振っている姿はよく見えますし、すごく力になります。
Q宮城県の「はる」さんからの質問です。「2021年シーズンで楽しかったことと悲しかったことを教えてください!」
うれしかったことは、スーパーGT第2戦の富士での優勝です。あの勝利は、過去のレースの中でもちょっと違った形のものでした。粘り強く、どちらかといえば守りのレースでつかみ取った勝利でした。第2戦の富士での自分たちの実力だけを考えると、勝つだけのポテンシャルはなかったと思いますが、ピット作業など、いろんなことを駆使して、チャンスをものにして、勝利に結びつけることができました。ドライバーとしてうれしいレースでした。Astemoカラーになって初年度だったので、早く勝ちたかったんです。そういう意味でも早く初勝利をプレゼントできたのも大きいですね。

残念だったことはスーパーGTの最終戦です。スタートドライバーを務めたバゲット選手が3周目の最終コーナーで他車と接触し、僕が走れないうちにレースが終わってしまいました。正直、シーズンが終わったという感じがなかったですね。そんな経験は初めてでした。やっぱりレースはチェッカーを受けなければならない。それは重々わかっていますが、ああいうことを経験して、あらためて感じましたね。
Q東京都の「とがGT」さんからの質問です。「塚越選手はHonda車に乗っていますが、いちクルマ車好きとして、他社のクルマに乗ってみたいと思ったりしないのでしょうか?
クルマ好きとしてはいろいろ乗りたいですよ! 僕は今、ワーゲンバス(VWタイプII)に乗りたいですね。でもクルマは他の趣味に比べてお金がかかりますよね。税金やガソリン代も高いし、維持するだけでもお金がかかります。好きなクルマに乗れるのは超幸せだと思います。特に若い人にとってそれほど大きな負担にならずに、好きなクルマに乗って仕事や遊びに行くことができる世の中になってほしいです。
Q東京都の「とがGT」さんからもう一問です。「レーサーの方々が一般の車や公道を走る時、どのような感覚で乗っているのでしょうか? もっとスピード出したいなと思ったり、素人のドライバーばかりで怖いと感じることはありますか?」
自動車の免許とレースのライセンスが紐づいているので、僕たちレーシングドライバーはもし免停や免許取り消しになってしまうと、レースのライセンスも同じように処分されてしまいます。だから、普段からすごく気を付けています。公道でもレースでも運転する時の感覚は皆さんと変わりませんよ。ぶつけたり、ルール違反をするのは、公道でもサーキットでも同じようにダメです。 サーキットと公道ではスピード領域が違うにしても感覚は一緒なんです。「レースで時速300キロを走っていると、公道を運転しているとすごく遅く感じるんじゃないですか?」とよく言われますが、そんなことはありません。というのも、乗っているクルマが違うからです。同じ時速100キロでもGTカーだと超絶に遅く感じます。フルコースイエロー(FCY)の時は時速80キロに制限されていますが、もう止まっているような感じがします。でも普通の乗用車で高速を時速80キロで走っていると、そこそこのスピードで走っているように感じます。確かに目ではもっと速く行けますが、クルマの性能がまったく違うので、全然スピードを出せません。

あとファンの方からは「時速300キロで走って怖くないですか?」とよく質問されますが、一般車で時速300キロを出すのはすごく怖いと思いますよ。でもレーシングカーで時速300キロは全然怖くないんです。むしろ、すごく安定しています。それにサーキットで一緒に走っているドライバーはみんなライセンスがあり、技術もあります。ちゃんとマナーを守って走っていますし、飛び出してくる歩行者や自転車もないし、恐怖感はありません。一般道のほうがよっぽど怖いですし、リスクがあると思います。
Q熊本県の「KEIHINタック」さんからの質問です。「SUGOのピットレーン出口改修で、今回走った時にどう感じましたか?」
ピットの出口の合流ですが、すごく難しいです。ピットが広くなったのはすごくいいのですが、あれだったら前のほうがいいのかなと思いますね。
Q大阪府の嶋田賢晃さんからの質問です。「ホンダさんのドライバーですが、スーパーGTに参戦している国内、海外の各メーカーのどのクルマに乗って見たいと思っていますか? 一度乗ってみたいメーカーと車種を聞きたいです」
GT300を含めて全部のマシンに乗ってみたいです。とても1台には絞れません。せめてGT500クラスのZとスープラは乗ってみたいです。同じホンダでもタイヤメーカーの違うマシンのステアリングを握って、乗り比べしてみたいです。タイヤが変わると、感覚的には全然違うクルマになると思いますので、乗ってみたいと思っています。
Q東京都の「あづき」さんからの質問です。「もし生まれる年代を選べたとしたら、いつ生まれたかったと思いますか?」
バブル全盛の時代(80年代後半から90年の前半)を経験してみたかったですね。当時はまだ環境や多様性などはそれほど考えられておらず、ある意味、シンプルで制約の少ない社会だったと思います。僕はバブルをまったく経験していないので、あの時代が良かったのかなあと思います。モータースポーツに関しても、参戦するチームやドライバーが多く、多くのカテゴリーで予選落ちがあったといいます。企業やスポンサーも多く、一番華やかな時代だったと思いますので、その時代を生きてみたかったです。
Q栃木県の「キタキツネ」さんからの質問です。「日光市のいい所はどこですか?」
先日、日光江戸村に初めて行きました。子どもたちが忍者になって戦っていましたが、すごく面白かったですね。意外と身近過ぎて、地元の観光地には行ったことがないというのはよく聞く話です。鬼怒川温泉にも泊まったことないですしね。自分も年齢を重ね、家族を持ったことで良さも変わると思いますが、家族連れで楽しむのであれば、江戸村はオススメですね。あと日光には道の駅があって、そこで地元の特産物を販売したり、食事もできたりするのですが、そこもオススメです。
Q栃木県の「塚越選手大好き!」さんからの質問です。「地元に帰ってきた時は何をしますか?」
最近はあまり地元に帰れてないんです。でも、いつも食べているラーメン屋さんや餃子屋さんが潰れてしまって、すごくショックです。地元から好きなものがなくなってしまうのは寂しいですね。
Q栃木県の「塚越選手大好き!」さんからもう一問です。「塚越選手にとって大事な場所はどこですか?」
いっぱいありますが、僕がオーナーを務めるレンタルカートコース『フォーミュランド・ラー飯能』は大事な場所のひとつです。ここで僕はレースを始め、レーサーとしての第一歩を記しました。モータースポーツにどう恩返しをしていくのか、というのは僕の活動の中にはありますし、これから頑張らなくてはいけないところでもあると感じています。まずはクルマやカートに乗ったことがない人、モータースポーツを知らないという人を少しでも減らしていくことが大事だと思っています。

そのためにはモータースポーツの入り口としてのカートはすごく大事だと考えています。また子どもたちがプロを目指そうと思った時も、ある程度、年齢を重ねてからカートやレースを知るのと、小さい頃から知っているのでは、スタート地点や可能性が大きく変わってきます。そういう意味でも、カートはすごく大事だと思いますので、これからもフォーミュランド・ラー飯能を続けていきたいと考えています。
Q広島県の「キリエ」さんからの質問です。「マリオカートは誰を使っていますか? レーサーならではの攻略法ってありますか?」
マリオカートはスーパーファミコンやNINTENDO 64の時代までしか知らないのですが、大好きでしたね。僕は大体、ピーチ姫を使っていました。実際のレースとはライン取りやドリフトを始めるタイミングは違うほうがゲームの中では速いと思いますが、僕はレースとまった同じようにドライビングしていました。結構、速かったですよ。やっぱり負けたくなかったですから、いろいろ考えながら走っていました。マリオカートは基本的に後ろのマシンが速いので、どのタイミングで追いついて、ダッシュキノコやバナナなどのアイテムをどのタイミングで使うとか、いろいろ考え、戦術を駆使して戦っていました。
Qこれが最後の質問です。埼玉県の「ユーキ」さんを始め、たくさんの方からの届いている質問です。「今シーズンの抱負や目標を教えてください」
スーパーGTは今シーズンも変わらずリアルレーシングから参戦します。パートナーは新たに松下選手に代わります。チームの雰囲気は変わると思いますし、僕も初めて年下のドライバーと組みますので、新たな気持ちでシーズンに臨むことになります。松下選手はよき仲間であり、ライバルでもあります。ドライバーとしてお互いに刺激しあい、僕自身、ますます磨いていって、悲願のタイトル獲得のために全力で走ります。

スーパーフォーミュラは残念ながらシートを獲得することはできませんでしたが、『SUPER FORMULA NEXT50』プロジェクトの活動の中でテストドライバーをつとめさせていただくことになりました。今シーズンのスーパーフォーミュラは「モビリティとエンターテインメントの技術開発の実験場」としてイベント毎に開発段階の技術を搭載したテストカーを走行させるなどの実証実験を繰り返すことを発表しています。そこにテストドライバーとして参加し、モータースポーツが今後もっともっと発展していくための活動に携わることができるのはすごく光栄ですし、大きな歓びです。もちろん純粋にフォーミュラカーに乗れるのはうれしいです。僕の経験が『SUPER FORMULA NEXT50』プロジェクトに貢献できるように、一生懸命にやっていきます。

2022年シーズンも国内のさまざまなサーキットでファンの皆さんにお会いできると思いますので、引き続き応援をよろしくお願いします!